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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百七十一 玲緒奈編 「合理性や利己主義そのもの」

五月三日。月曜日。晴れ、




ゴールデンウイーク真っ只中の月曜日。だけど僕たちは何も変わらずにのんびりと家で過ごす。


『新型コロナウイルス感染症』のことで不要不急の外出は避けるようにって言われてるのをいいことに、ね。


正直、人混みとかは苦手だよ。だからこうして家でのんびりできるならそれでいい。しかも僕は、仕事もできるし。


本当は連休明けにすればいいんだけど、ある意味、仕事が気分転換にもなってるっていうのは事実なんだ。


するとやっぱり、玲緒奈れおなは僕の仕事の邪魔をしてくれる。


「やめて~」


僕が声を上げると、


「ぷぷぷぷぷ」


玲緒奈が嬉しそうに笑った。僕の反応が面白いんだろう。


こうやって仕事を邪魔しているのを叱らなかったら、ずっと邪魔するようになると思う人もいるかもしれないけど、僕の実感としては逆だった。今のうちにこうして思いっ切り遊んでもらった方が、早く満足してくれる気がするんだ。中途半端な状態で強引にやめさせようとするからいつまで経っても引きずってしまう。


でも、一応、『困ってる』というのは表明した方がいい気もするから、『やめて』とは言うけどね。


ただ、今はまだ、『やめて』という言葉の意味を理解してないから効果がない。それが理解できてくると、徐々に自分がやってることの意味も理解できていくんだろうな。


しかも、言葉の意味を理解してからでも、それが完全に腑に落ちるまでにも時間が必要だと思う。だから僕は、長い目で見守っていこうと思う。それに、かまってほしくてそういうことをするのなら、なおのこと他人じゃなく僕に対してしてほしい。玲緒奈をこの世に送り出した張本人じゃない他人が、この子に煩わされる理由はないはずだから。対して、この子をこの世に送り出した張本人である僕には、この子を受け止める義務がある。


でも、『義務』とは言っても、僕自身、嫌々相手をするわけじゃないんだ。玲緒奈の相手をするのは楽しい。この子が生きている実感があるから。


玲緒奈や沙奈子に対して丁寧に接するのは、ただの『優しさ』や『思いやり』じゃない。そうすることが結果として僕自身の利になるという、合理性や利己主義そのものなんだ。僕は、僕自身が幸せになりたいからこそ、必要な手間を掛けてるだけなんだ。


玲緒奈に『人としての在り方』を、『他人との接し方』を、皮膚感覚で学んでほしいから、彼女自身に対してそう接するんだ。横柄で横暴で高圧的な接し方を学び取ってほしくないから、そういう接し方をしないんだ。


それが結局、僕自身のためになるんだよ。



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