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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百七十 玲緒奈編 「何か異様なことのように」

五月二日。日曜日。曇り時々雨。




何か、ナプキン三枚分の吸収力がある『生理ショーツ』が開発されたみたいな話があったらしいけど、それを聞いて、山仁やまひとさんに話を伺った時のことを思いだした。


沙奈子の場合は、この家でみんなで暮らし始めてから初潮を迎えたから絵里奈や玲那が実際には対処してくれたけど、山仁さんの場合は、全部、やったそうだ。


イチコさんが初潮を迎えた時も対処したし、生理用品の類も全部山仁さんが用意した。スーパーでそれを買う時に他人からどう見られるかとかなんてまったく考えず、他人がどういう目で見てても一切取り合わず、堂々としてたって。


「月経は、不潔なものでも淫猥なものでもありません。生きているからこそ存在する、ただの『生理現象』です。生きてる証の一つなんです。特別なものでも何でもない。だから私は、ただ淡々と対処してきただけです。病院で看護師が入院患者の介護を、高齢者施設で介護士が入所者の介護を、ただ淡々と行うのと同じです。私は男性ですから、月経の辛さ苦しさまでは理解できません。しかし、我が子が月経で下着を汚した時に狼狽えることなく必要な処置をすれば解決する程度のことであるのは理解できます。


ナプキンを使っていても漏れることもあるから、夜は介護用おむつを使ったり、昼は生理ショーツも補助的に使いました。経血で汚れた下着も洗いました。だから経血がどういうものかも私は知っています。けれど、それらは何も特別なことじゃない。生きていれば普通に起こりえることなんです。男性である私は月経がもたらす苦痛や不快感までは実感できません。ゆえにだからこそ、『理解できないという事実を理解する』ことを心掛けてきました。イチコが辛そうにしていても、『生理は病気じゃないんだから大袈裟にするな』というようなことは言いませんでした。


私だって、病気とまでは言えなくても体調が優れない時はあります。いわゆる『未病』という状態です。そういう時に、『病気じゃないんだから大袈裟にするな』と言われては、不快にもなります。それと同じことでしょう。病気かどうかは関係なく、『体調が優れないという事実』は現にあるんですから、その事実を受け止められなくて何が『大人』でしょうか。


私はそれを心掛けているんです」


と。


僕も、同じだった。沙奈子が初潮を迎えて、


『血のおしっこが出た』


と僕に訴えてきた時にも、それが初潮だと分かったら冷静になれた。男親だからって娘の初潮に狼狽えなきゃいけないっていう決まりはないよね。


生きていれば起こるただの『生理現象』を何か異様なことのように考える方がどうかしてるんじゃないのかな。



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