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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百六十九 玲緒奈編 「それこそが普通」

五月一日。土曜日。曇り。


今日は風が強い。




一人でのお座りがかなり安定してきた玲緒奈れおなが布団の上で自力で座って『どやあ!』って感じで自慢げな表情を見せる様子に、僕と絵里奈と玲那は、


「すごいすごい♡」


「ああ~っ♡」


「カワイイ♡」


メロメロになってた。


沙奈子も、千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや結人ゆうとくんが帰った後に玲緒奈がお座りをするところを見て、


「すごい…」


笑顔になってくれる。


本当は、千早ちゃんや大希くんや結人くんにも見てもらいたいんだけど、


「いや~、もしものことがあったらヤだし、映像で見せてもらえたらいいよ。もうちょっと大きくなったら一緒に遊ぼう」


千早ちゃんがそう言って遠慮するんだ。大希くんは、


「そうだね」


って言うし、結人くんは、


「別に…どうでもいい……」


だって。だけど、結人くんも口ではそんな言い方するけど、千早ちゃんはそれについて、


「結人はさ、赤ちゃん相手にどんな顔したらいいのか分かんないから困ってるだけなんだよ。って、実は私もなんだけどさ」


って。その上で、


「結人も私も、親に優しくしてもらった覚えがないから、どうしたらいいのか分かんないんだ。沙奈やヒロは、私に優しくしてくれるじゃん?。だから私も同じようにしたらいいんだなって分かるんだけど、赤ん坊って、ぐずったりするっしょ?。そしたらもう分かんないんだよ。自分も泣くわけにもいかないしさ。『普通にしてたらいいだろ』って言うのもいるかもだけど、その『普通』ってのが分かんないんだ。だって、私が小さかった時、親は怒鳴りまくる貶しまくるだからね。私にとってはそれが『普通』だったんだよ。私にとっての『普通』じゃダメじゃん?」


正直に話してくれる。


今じゃすっかり明るくなった千早ちゃんだけど、それはあくまで、周りが穏やかに接してくれるから、それをそのまま返すつもりでやったらいいっていうだけなんだって。だから、暴力的に接してこられたり、逆に怯えられたりしたら、途端にどうしていいのか分からなくなる。もっとも、暴力的に接してこられたら、そのまま暴力的な態度で返してしまえるらしいけど。彼女にとってはそれこそが『普通』だったから。


だけどそれじゃ駄目なんだっていうのも分かってるんだ。暴力に暴力で返したら、いつか取り返しのつかないことになるのは、彼女自身、肌で感じてるって。


お母さんやお姉さんたちが暴力的じゃなくなったことで、千早ちゃんの家は、辛うじて平穏が保たれてる。それ以前には、思い切り蹴飛ばされてふっとんでタンスに思い切りぶつかったりしたこともあった。今まで無事だったのは、運が良かっただけなんだろうな。



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