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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百六十七 玲緒奈編 「赤ん坊に我慢をさせる」

四月二十九日。木曜日。雨。




生まれて間もない赤ん坊を死なせた事件。『鼻と口を手で塞いだ』とかいう形だったみたいなことを聞くと、ますます、


『赤ん坊に我慢をさせる』


ことの意味が理解できなくなる。普通の健康な大人が、鼻と口を押さえるだけで、そんな簡単に死ぬ?。そもそも意識を失ってて抵抗もできない状態だったりしたらともかく、普通は寝ててもそんなことされたら咄嗟に抵抗するんじゃないのかな。だけど赤ん坊には、大人の力を振りほどくほどの力はないよね。確かに把握反射とかで玲緒奈れおなが僕の指を握った時なんかには結構な力だったと感じたけど、それでも大人とは比べ物にならないくらいにささやかなものだった。


こんなに非力で些細なことで命を失う赤ん坊に何を我慢させるのか、まったく分からないよ。


助けを求めて泣いているのを放っておかれる不安だって、大人が一人で部屋に取り残される時の不安とは比べ物にならないとしか思えない。それを我慢させようなんて、どんな神経をしてれば言えるのか、まったく理解できない。


ううん。本当は、沙奈子と暮らし始める以前の僕も、こんなことまでは考えてなかったから、たぶん、放っておけたと思う。でも、今は無理だ。僕や絵里奈に放っておかれる玲緒奈の恐怖と不安と絶望を思うと、それだけで頭がおかしくなりそうになる。


だから僕は、玲緒奈を放っておいたりしない。助けを求められればすぐに応えたい。


「どうしたの?。もう大丈夫だよ。怖くない。パパがいるよ」


って、声を掛けてきた。


辛い時、悲しい時、苦しい時、不安な時には、手を差し伸べたい。本人が求めてなければ見守るだけにするとしても、求められればすぐに応えたいんだ。それはもちろん、沙奈子に対しても同じ。


ううん、玲緒奈や沙奈子に対してだけじゃないな。玲那や絵里奈に対しても同じなんだ。自分の大切な人を守り支える具体的な姿勢を、ちゃんと示したいと思うんだ。


それを、玲緒奈に対して、玲緒奈の前で、『こうするんだよ』ってやってみせたい。


子供に対して横柄な態度を取ったり怒鳴りつけたりっていうのは、結局、そういうことなんだと思う。


『自分より圧倒的に弱い相手に対して横柄な態度を取ったり怒鳴りつけていい』


っていう『見本』を見せることになるんだってよく分かった。


親が『自分より圧倒的に弱い相手に対して横柄な態度を取ったり怒鳴りつける』ってしてるから、子供もそれを真似するんだって。


そうじゃないと、説明がつかないよ。



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