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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百五十九 玲緒奈編 「こんなことをいつまで」

四月二十一日。水曜日。晴れ。




また、イジメが原因で子供が命を失うという事件があった。


しかも、いつものことだけど、学校側はそれを『イジメ』だと認めてないらしい。


こういうのを見るたびに、つくづく、沙奈子はいい学校に行けたんだなって思う。僕が選んだわけじゃなくて、本当にたまたまだったから運がよかっただけなのは事実でも、救われたのも事実なんだ。


そしてそれによって救われたのは、沙奈子だけじゃない。沙奈子にきつくあたってた千早ちはやちゃんも救われたんだ。


沙奈子と千早ちゃんの件は、まだ『イジメ』とは断定できない段階だったけど、学校側は『イジメの疑い案件』として迅速に丁寧に対処してくれた。だから、沙奈子だけじゃなく千早ちゃんにとっても傷が浅くて済んだんだ。


なのに、『イジメ』があることを認めたくないからって見て見ぬフリをして放っておいて取り返しのつかない結果を迎えて……。もう、誰も救われないじゃないか。


被害者の子は戻らない。加害者はこれからずっと『人死なせた』として後ろ指をさされて生きていく。教師も学校も教育委員会も責任を問われ続ける。しかも、加害者の個人情報も晒されるだろうし、きっとまた、無関係な人まで巻き込まれる。玲那が事件を起こした時にも、波多野さんのお兄さんが事件を起こした時にも、同姓同名の、それどころか『名前が似てるだけ』の、まったく無関係な人にまで脅迫めいたメッセージとか電話とかが届いたらしいのが、繰り返されるんだ。


起こってしまったことは取り消せない。なかったことにはならない。


事件によって被害者と加害者が生まれ、そこからさらに『正義を振りかざす人』が別の被害者を作っていく。


こんなことをいつまで繰り返すつもりなの?。それが『大人』のすること?。そんな『大人』をなんで尊敬できると思うの?。尊敬しなくちゃいけないの?。尊敬してほしいなら、『尊敬に値する大人』になるべきだと僕は思うんだけどな。


僕自身は、『尊敬に値する大人』に自分がなれてるとは思わないから、沙奈子や玲緒奈れおなに尊敬してもらおうとは思ってない。ただただ、同じ『人間』として恥ずかしくないようにいられたらって思うだけなんだ。それ自体、できてる自信はないけど。


そして、沙奈子と千早ちゃんの件で学校がしっかりと動いてくれたことには感謝してる。そういう学校もあるという事実は、僕にとっても救いになってる。この世界そのものに絶望せずに済んでるという意味でね。


だからこそ、沙奈子が通ってた学校と同じことがなぜできないのかが不思議で仕方ない。『イジメの疑い案件』の時点で対処しておけばこんなことにはならなかったかもしれないのに、それを『やりたくない』と逃げてきた結果がこれなんだよね?。



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