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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百五十六 玲緒奈編 「だから我慢できるってのは」

四月十八日。日曜日。曇り時々雨。




玲緒奈れおなは今日も元気だ。いっぱいおしっこをして、いっぱいウンチをして、怒って、笑って、


『私のために働け、下僕ども!』


とでも言いたげに、


「ぷうぷぽぽ!」


とか声を上げて手足をばたつかせてた。


それがまた可愛くて、つい、


「はいはい、お姫様、仰せの通りに」


と言いながらおむつを換える。


こうして玲緒奈と向き合ってるからこそ、


『赤ん坊のうちから我慢を覚えさせる』


なんていう考え方に合理性を見出せないんだ。だって、今の玲緒奈に我慢を強いるのは、『命の危険に曝すのと同じ』としか思えないから。大人にとっては本当に些細なことに思えても、赤ん坊にとっては命の危険すらあるよね。乱暴に『高い高い』をしたり、あやそうとして雑に揺さぶったりするだけで『揺さぶられっ子症候群』というものが有り得るんだよね?。しかも、大人と同じものを食べさせようとするだけで死に至ることもある。


そんな玲緒奈に、何を『我慢』させろって言うの?。


僕の勝手でこんな、怖いこと、嫌なこと、苦しいこと、辛いことが無数にある世界に送り出したのに、その上、玲緒奈は何を我慢しなくちゃいけないの?。


だけど、確かに、生きていくには、我慢することになる場面も無数にある。だったら、実際に『我慢するしかない状況』に直面した時にそれにどう向き合うかを教えれば済む話じゃないのかな。


わざと我慢させようとしなくてもさ。


沙奈子だって、僕は決して我慢を強いるつもりはないんだ。でも、学校で嫌なことがあったりして、その瞬間は我慢しなきゃならないことも、毎日のようにある。これは、千早ちはやちゃんや結人ゆうとくんの方が分かりやすいかな。何か嫌なことがあったからって相手に暴力を振るっていいわけじゃないから、我慢してるんだ。二人はちゃんと我慢してくれてる。


そうやって我慢してくれてることを、帰ってきてから労うんだ。そんな風に労ってもらえるから我慢もできる。


千早ちゃん自身が言ってたよ。


「昔の私はさ、我慢が大っ嫌いだった。自分だけが我慢しなきゃいけないのがマジで許せなかった。でもさ、今はちゃんと分かるよ。我慢してるのは私だけじゃないんだってさ。しかも、沙奈もヒロもピカえも小父さんも、私がちゃんと我慢できてることを褒めてくれるし慰めてくれるしさ。それだけじゃないな。我慢しきれなくて文句言いたくなったら、聞いてくれるんだよ。だから我慢できるってのは間違いなくあると思う」


って。


我慢が大嫌いだった千早ちはやちゃんが、我慢をできるようになった。だったら、玲緒奈だって別に焦る必要はないと思うんだ。



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