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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百五十三 玲緒奈編 「改めて考えなくちゃ」

四月十五日。木曜日。晴れ。




結人ゆうとくんには、暴力的な一面があるけど、彼の場合のそれは、


『大人は敵』


だったからだと思う。加えて、


『暴力的に接してくる相手は敵』


だったからだ。


それは彼の過去が原因だっただろうから、そのこと自体を責めようとは僕は思わない。ただ、同時に、彼がもし周りの子に対して暴力を振るったり授業中に暴れて勉強の邪魔をするような子だった場合には、他の子たちから離して個別に授業を受けさせることも必要だとは思う。


そのことを、『結人くんの教育を受ける権利を侵害してる』とは、思わないんだ。だって、別の教室で授業は受けられてるんだから。


もし、彼が他の子たちと一緒に授業を受けていてそれで妨害するようなことをしたら、これって、


『他の子の『教育を受ける権利を侵害してる』ってことになる』


よね?。『教育を受ける権利を侵害しちゃ駄目』なんだったら、授業を妨害して他の子が受けるはずだった『教育を受ける機会』を奪っちゃ駄目だと思うんだ。しかも、邪魔した本人も、他の教室でだけど授業が受けられるなら、ちゃんと『教育を受ける機会』は保証されてるわけで。


『個別の事情』というものを考慮すればこそ、『本人に合った教育の場』ってものを提供する必要があるし、それは決して、他の子の犠牲の上で成り立つものじゃないと僕も思う。


ただ、結人くんはそこまでじゃなかった。彼が暴力的になる理由がはっきりした以上、今の学校でも対処できてるんなら、何も問題ないと思う。


だけど、対処できない、対処する能力のない学校に無理に通わせるのは、他の子にとってももちろん不幸だし、何より、本人が不幸だと思う。


『この学校に通わせたい』というのは、所詮は『親のエゴ』だと僕は感じる。それが上手くはまればいいけど、子供本人に合ってないなら、それこそ『親のエゴ』『親の自己満足』でしかないと思うんだ。


実は、結人くん。学校に通ってる時よりも、うちに集まって、沙奈子や千早ちはやちゃんや大希ひろきくんと四人だけで勉強してる時の方が穏やかな表情してるって。だから彼にとっては、今回の『新型コロナウイスる感染症対策のための休校』は、むしろプラスになったみたいなんだ。


『学校に通わせないと教育を受けさせたことにならない』みたいな感覚があるから『なるべく学校には通わせないと』って思ってしまうけど、よくよく考えてみたら『教育を受けられてる』ってことが確認できて、『教育を受ける機会』がしっかりと担保されるなら、別に家庭学習とか塾とかでもいいんじゃないのかなって、思ってしまった。


実際、結人くんの勉強は、すごく捗ってる。学校で授業を受けてる時以上に集中できてる。本人も、


「授業よりも分かりやすい……」


って言ってるそうだ。


学校の授業は、どうしても、三十人とか四十人とかに一度に教えないといけないから、それぞれの生徒の理解度とかに合わせて調節するのが難しいよね。だけど今、結人くんに勉強を教えてる沙奈子は、彼がちゃんと理解できるように合わせながらやってるそうなんだ。


『学校に通わせないと教育を受けさせたことにならないという常識』について改めて考えなくちゃいけない時期に来てるのかなって気がしたな。



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