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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百四十四 玲緒奈編 「本当に理想郷なら」

四月六日。火曜日。晴れ。




今日は、沙奈子の学校で始業式がある。今日は学校に行くけど、明日は入学式で二年生三年生は休みだし、木曜日からの予定も分からないしで、実際の授業はいつからになるのか……。


と思っていたら、沙奈子が学校でもらってきたお知らせに、


『十二日の月曜日から再開の予定でしたが、現在の状況を鑑み、五月七日まで延長となりました』


って。


どうやら、学校のHPに再開の予定日を掲載してたらしいんだけど、僕が見落としてたんだ。学校としてもそういう保護者もいることを想定して、こうして改めてプリントとして配布したってことだね。


こういうところからも、僕が決して完璧な人間じゃないってことが分かる。自分が完璧じゃないのに自分以外の人に完璧を求めるのはおかしいと思うんだ。


それも、沙奈子や玲緒奈れおなには分かってもらわないといけないと思う。


だからこそ、玲緒奈が僕たちの思ってる通りにしてくれないことでいちいち苛立つこともしないように心掛けてる。


離乳食として始めたリンゴの果汁も、気が向かない時には口にしてくれない。ここで、


『せっかく用意したのに!』


みたいに苛立っても、玲緒奈が思い通りになってくれるわけじゃない。


自分の思い通りになってくれることを自分以外の誰かに押し付けようとするから、事件を起こす人がいるんじゃないの?。自分の思い通りになってくれることを押し付けるのが『愛情』だとか、『愛があればできるはずだ』って考える人がいるんじゃないの?。


そして、


『自分はこんなに愛してるんだからそれを受け入れてもらえて当然』


って考える人が。


これについて玲那が言ってた。


「私を『買った』客の中にもね、『自分は君を愛してるからこうやってお金を出してあげてるんだよ』みたいなことをホザいてるのが何人もいたよ。だけどね、当の私は、『はあ!?。お前みたいな犯罪者のクソキモ変質者が何言ってんだ!?』としか思わなかった。私のことを愛してるんなら、手を出すんじゃねーよ!。体に触れんじゃねーよ!。てか、息もするな!。生きてるな!。死んでろ!。ってのが、私の正直な気持ちだったよ。もし、『言いたいことが言える世の中』ってのが本当に理想郷なら、私のこの気持ちも、世間に向けて発信していいんだよね?。『こっちはお前のことなんか一ピコメートルも好きとか思ってないんだ!。欲情すんな!。死ね!。死んどけ!!』って気持ちも正直に発信していいんだよね?。『言いたいことが言える世の中』なんだったらさ」


ってね。


でも、玲那はその『正直な気持ち』を世間に向けて発信することはない。だってそれをすれば、


『お前が死ね!』


みたいに言われるのは分かり切ってるからね。



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