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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百四十二 玲緒奈編 「個別の事情を」

四月四日。日曜日。雨。




『せっかく一人の人間として扱ってやってるのに『分からない』ってなんだ!』


自分の思い通りの反応を返してくれないからってそんな風に考えるのは、それは『相手を人として敬ってる』ってことにはならないよね。


自分が期待してる通りの反応を相手が常に返してくれるわけじゃないのは、自分が誰かが期待してる通りの反応を常に返せるわけじゃないことでも分かるんじゃないのかな。好きでもない相手から好意を寄せられてそれで相手の望んでる通りの振る舞いができるって言うの?。できないのなら、自分以外の誰かが自分にとって常に期待してる通りの反応を返してくれないのも当然だよね。


僕は、玲緒奈れおなにそれを学んでほしいんだ。『相手が常に自分にとって都合のいい存在ってわけじゃない。というのを理解してる』というのがどういうものかを、僕が玲緒奈に対してやってみせることで、彼女もそれができるようになっていくんだと思う。山仁やまひとさんは、イチコさんと大希ひろきくんに、まさにそれを示してきたんだ。


世の中には、


『好きな相手にちょっかい掛けたり意地悪したりするのは、愛情表現だ』


と思ってる人がいるらしい。だけど僕にはその感覚はまったく理解できない。相手が嫌がっているのを『照れ隠し』だとか考える人がいるっていうのが理解できない。


『イヤよイヤよも好きのうち』


なんて考える人がいるのが理解できないんだ。


相手が本気で嫌がっているのを『イヤよイヤよも好きのうち』なんて自分に都合よくすり替える人の感覚がまったく分からない。


僕は、沙奈子が中学に上がっても一緒にお風呂に入ったりしてたけど、もし、彼女が嫌がってたらすぐにでもやめるつもりだった。


でも同時に、彼女を『人として敬う』からこそ、『一人でお風呂に入るのが嫌。怖い』と本気で感じているのを蔑ろにもできなかっただけなんだ。


性別どうこう言う以前に、沙奈子を『一人の人間』として尊重すればこそ、彼女の気持ちを無視してまで『常識』を優先することはできなかった。


一方、玲那の場合は、


『自分を女性として見られるのが嫌』


というのがあった。玲那が経験したことからすれば、そう考えるのも当然だと思う。だから僕は、玲那のことも、ただただ『一人の人間』として敬うことを心掛けたんだ。そして、『一人の人間として敬う』からこそ、


『女性として見られるのは嫌だけど、それでもなお『月経』はあって、その体は女性のそれ』


という現実も受け止めることも心掛けてきたんだ。


性別とか関係なく、人はそれぞれ、『個別の事情』を抱えてたりするよね。玲那が、


『自分が女性であることを嫌悪しつつ女性であることをやめられない』


という現実も、『彼女が抱える個別の事情』として受け止めてきたんだよ。


一人の人間として敬うからこそね。



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