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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百三十九 玲緒奈編 「自分とは別の人」

四月一日。木曜日。晴れ。




本来は今日から会社に出勤するはずだったのが引き続き在宅仕事になったけど、することは何も変わらない。


そして、玲緒奈れおなの成長は、本当に順調だった。離乳食として始めた『リンゴの果汁』も、気に入ってくれたみたいだ。


でも、三口四口と口にすると、「ぷいっ」と顔を逸らすのもそのままかな。だけど僕たちは、ここで強引なことはしないでおこうと思ってる。親の都合で離乳食のペースを決めてそれに従わせようとすると、きっと苛々してしまうだろうし。


玲緒奈を『僕たちとは別の人』だと認めるなら、僕たちの都合を一方的に押し付けることはできないよ。自分が他人からそんな風にされるのが嫌なんだから、玲緒奈だって同じはずなんだ。


『自分の子供なんだから自分の思い通りにするのが当たり前』


という考えは、僕の実感にはまったくそぐわない。僕の両親が、玲那の実の両親が、まさにそういう考えの人だったから。他にも、千早ちはやちゃんのご両親も、波多野さんのご両親も、田上たのうえさんのお母さんも、そういう考えの人だよね。


そのことで直接責めるつもりは僕にはないけど、でも、そこから学び取るべきものはあると思うんだ。


自分の子供を『自分とは別の人』だと認めて、その人格を認めて、受け止める。というのが必要だと、僕は学んだ。


確かに、自分の思い通りにしたいという気持ちは僕にもある。でも、人間同士の関係ではそれはトラブルの原因にしかならないよね。自分の都合を一方的に相手に押し付けることが諍いの原因になってるのは、まぎれもない事実だよね。


しかも、自分は他人から一方的に押し付けられるのを嫌うのに、それが自分以外の人も同じだという事実を認めようとしない。


自分を『大人』だと思うのなら、どうしてその事実から目を背けるんだろう。事実を事実として受け止められないのを『大人』だと言うのなら、僕は、大人に対して『尊敬する値打ち』なんてあるとは思わないよ。


親が、自分の子供に対して、


『相手を、自分とは別の人、別の人格を持った人と認めて敬う』


という姿勢を見せることで、言葉を学ぶのと同じように『自分以外の人を敬う姿勢』を学び取ってもらうんだと僕は実感してる。僕を真っ直ぐに見詰める玲緒奈の目が、僕から『人間としての在り方』を学び取ろうとしてるのが分かる。


だったら、僕は、親として、それをこの子に示さなくちゃいけない。


『相手を、自分とは別の人、別の人格を持った人と認めて敬う』というのを実践してみせなきゃいけない。それを教わっていれば、他人をイジメたりパワハラで追い詰めたりなんてしないと思うんだ。



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