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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百三十八 玲緒奈編 「どうして自分ばかり」

三月三十一日。水曜日。晴れ。




今日も玲緒奈れおなは、「ふんすふんす!」と鼻息荒く、僕の仕事の邪魔をしてくれてた。


「やめて~!。かんべんして~!」


僕が言うと、


「ぷぷうぷぷぷぷ!」


って笑うんだ。彼女にとっては『遊び』なんだろうな。


だけど、満足するまでこうやって相手しておけば、長くても一時間ちょっとくらいで収まってくれた。


「私が相手しますよ?」


絵里奈はそう言ってくれるけど、玲緒奈はあくまで僕と遊びたいんだと思う。だから、


「いいよ。絵里奈は今のうちに家のことをしててくれたら」


って返した。


「そうですか……。分かりました」


と言って、絵里奈は、家計簿をつける。それは彼女の役目だったからね。スマホのアプリで割と簡単に管理ができるようになったとはいえ、なんだかんだと手間がかかる作業であることは変わりない。


僕の方は、玲緒奈がそうやって遊んでる間は休憩も兼ねてるから、別に苛々もしない。『九時から六時』みたいにきっちりとした時間では作業できないとしても、『実働八時間』は守れてる。


会社との打ち合わせも、可能な限りビデオ通話で行うことになった。すると、他にも、子供をあやしながら打ち合わせに参加してる人がいた。子供を預けていた保育園が今回の『臨時休校』に倣って休園したことでそうするしかなくなったらしい。


僕が務めている今の会社は、『育児にまつわるあれこれ』については理解してくれてるところで、打ち合わせそのものに支障がなければ、子供をあやしながらでもやいやい言われることはない。僕も、玲緒奈を膝に抱いたまま参加することが多い。


本当にいい会社を見付けられたと思ってる。給与そのものは必ずしも高くなくても、こうやって『育児』のみならず、『ペットの急病』とか『親の介護』とかについても対応してくれる分だけコストがかかってるんだと思えば納得はできてる。


給与も決して高くないのに労働環境が厳しいなんていういわゆる『ブラック企業』に比べれば、それこそ『天国』なんじゃないかな。しかも、洲律すりつさんのような、他人のペースに合わせたり場の空気を読んだりというのが苦手な人でも働きやすいし。


だけどそれは同時に、『あまり大きな規模の会社じゃないからできること』というのもあるみたいだね。


ある程度以上の規模になってくると今度はそれだけ『しがらみ』も増えて、周りのやり方に合わせないといけなくなってくるらしいし。


そういう意味でも、この世っていうのは決して自分の思い通りになるところじゃないんだ。それをわきまえてないと、


『どうして自分ばかりこんな上手くいかないんだ!?』


みたいに思ってしまうんだろうな。



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