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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百二十二 玲緒奈編 「ある程度は報われる」

三月十五日。月曜日。晴れ。




日付が変わってすぐ、和歌山で大きな地震があったそうだ。幸い、被害はそれほどでもなかったみたいだけど、東北の方でも東日本大震災の時の地震の余震と見られる強い地震があったし、『新型コロナウイルス感染症』の件で大変なことになってる中でのそれに、僕も気分が沈んでしまう。


だけど、僕が気に病んでたって何も変わらない。僕は僕にできることをするだけだ。




今日は三年生の卒業式。だけど、『新型コロナウイルス感染症』の影響で、三年生と、二年生の代表だけで行われることになった。卒業生の保護者も、『参加する場合には、世帯の代表一人だけでお願いします』っていう要請が。


もし、来年、沙奈子が卒業する時にもこんな感じだったら、僕はどうするだろう?。


たぶん、要請に従うだろうな。ただ、誰が行くかで悩みそうだ。


それを絵里奈に話すと。


「私も出席したいですけど、ここはやっぱり、いたるさんに行ってもらうべきかな。って思います」


ということだった。けれど玲那は、


「でも、ただの『要請』だよね?。絶対に守らなきゃいけないことじゃないよね?。だったら私は、パパちゃんと絵里奈二人で行ってもいいと思うんだ。沙奈子ちゃんは、それくらいは大目に見てもらってもいいんじゃないの?。ホントは私も出席したいけど、まあそれは自粛するということでさ」


って。それに対して僕は言ったんだ。


「玲那の言いたいことも分かる。沙奈子の境遇を思えば、それくらいは。って気持ちにもなる。でもそれは、他人には関係ないことだし、沙奈子と同じように辛い経験をしてきた子が他にもいるかもしれないし。そもそも『どの程度までなら大目に見てもらえるか?』っていうのもあるしさ。だから、僕が行くってことだったら、僕一人で行ってくるよ。それが、家長としての僕の判断だ」


「ぶーっ!。ぶーっ!」


玲那は不満そうに唇を尖らせつつも、理屈では分かってくれた。


「む~っ!。『家長として』とか言われたら、反対できないじゃん!。プンスコ!」


とは言ってたけどね。


「ありがとう。玲那の気持ちは嬉しいよ」


僕も、正直な気持ちを伝える。玲那が僕と絵里奈の二人で沙奈子の卒業式に出席できることを望んでくれてるのは、沙奈子や僕や絵里奈のことを思って言ってくれてるんだというのは分かる。


だからその気持ちそのものは認めたいと思うんだ。実際にそれができるかどうかは別としてね。


この世は、自分の思い通りにいくことの方がずっと少ない。でも、たとえ望みが実現できなくても、その気持ちを認めてもらえれば、ある程度は報われるんじゃないかな。



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