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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百十九 玲緒奈編 「そんな自分を律するためには」

三月十二日。金曜日。曇りのち雨。




世の中には、


『虐待が連鎖するなんてデータはない』


と主張する人がいるそうだ。でも僕は、実際に虐待を受けてきた沙奈子や玲那や千早ちはやちゃんや結人ゆうとくんを見てきて、『虐待は連鎖しない』なんて考え方はまったくできないんだ。


むしろ、


『連鎖しないように努力しないと、十中八九連鎖するだろうな』


としか思わない。沙奈子も、玲那も、千早ちゃんも、結人くんも、もし、今の環境になかったら……。ううん、今の環境のままで大人になっても、悪い条件が重なってしまったら、自分の子供を虐待してしまったりということがあるかもしれないという実感しかない。


だからこそ、『悪い条件』が重ならないように、これからもずっと努力し続けないといけない気がするんだ。


玲那も言ってた。


「正直、私だって、もし自分に子供ができたら、虐待してしまわない自信はまったくないよ。『虐待が連鎖するなんてデータはない』っていう主張も、確かに正式に調べたデータはないのかもしれなくても、『やられたらやり返すのが当たり前』って思ってるのがこれだけ世の中に当たり前にいるんだから、それを『自分が子供の頃にやられたことを自分の子供にも』って考えにすり替えるのがいない保証なんか一ミリもないじゃん。


てか、現に、『やられたらやり返す』ってのを、『やられた相手』に直接やり返すんじゃなくて、まったく無関係な誰かに向けてる奴なんて、いくらでもいるじゃん。それこそ、『自分の好きなアニメが貶されたから、別のアニメを好きな人が集まってるところに押しかけて荒らす』なんてことをしてる奴が現にいるじゃん。そいつが好きなアニメを貶したわけでもない人たちにまで嫌な思いさせようって考えるのが実際にいるじゃん。これでどうして、『自分が親にやられたことを、自分の子供にもやる。って考えるのがいない』とか思えんの?。


私が玲緒奈れおなに理不尽なことをしないでいられてるのは、パパちゃんや絵里奈がいるからだよ。パパちゃんや絵里奈が私を癒してくれるから、玲緒奈に酷いことしてストレスを転嫁するようなことをせずに済んでるんだ。それがなかったら、『絶対に自分に反撃できない相手を傷め付けて憂さ慣らしをする』ってことをやってしまっても、何の不思議もないよ。他でもない私自身がそう思うんだ」


ってね。


僕も、玲那ほどの目に遭ってきたわけじゃないけど、つい、自分より弱い相手を、抵抗できない相手を、思うままに傷め付けて憂さ晴らししたいという願望がないわけじゃないから。


そんな自分を律するためには、努力を続けるしかないんだ。



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