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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百十六 玲緒奈編 「飽きるまで好きにさせて」

三月九日。火曜日。晴れ。




『他の奴はみんな好き勝手に傷付けようとしてるのに自分だけが我慢しなきゃならないなんて、不公平だ!』


そんなことを考えてる人は、自分の親についてどう思ってるんだろう?。


『みんな』ってことは、その人の親も含まれてるってことじゃないのかな。


中には、『両親が周りから傷付けられて苦しめられてってしてるのを見てそう感じた』っていう人もいるかもしれないけど、たぶん、そういう人は少数派なんじゃないかな。


僕の両親も沙奈子の実の両親も絵里奈の両親も玲那の実の両親も、結人ゆうとくんの実の両親も、波多野さんの両親も、田上たのうえさんのお母さんも、誰かを傷付けようとしてきたからね。


自分の親が率先してそんなことをしてれば、なるほど、『他の奴はみんな』って気分にもなるかもしれない。


僕がそれを、


『みんながみんなそうじゃない!』


って自分の子供に言うためには、僕自身が誰かを傷付けるようなことをしちゃいけないと思う。『相手が悪いから』みたいに『他人の所為』にして誰かを傷付けることを正当化したくない。


僕が誰かを傷付けるようなことをしなければ、沙奈子も玲緒奈も、『他の奴はみんな』って言えなくなるよね。少なくとも、自分たちの親はそうじゃないんだから。


だからこそ、沙奈子のことも玲緒奈のことも、わざと傷付けるようなことはしない。


沙奈子は、『悪いこと』をしない。それは、少なくとも今は、『悪いことをする必要がない』からだと思う。


家族の誰も、沙奈子に理不尽なことをしない。学校で理不尽な目に遭っても、家に帰れば癒される。リセットできる。


今のこの環境を壊してまで、無理に手に入れなくちゃいけないものも、実現しなきゃいけないことも、彼女にはない。


これは、玲那も同じ。だから玲那は、『再犯』はしない。


今のこの環境が維持される間は。


そして僕は、沙奈子や玲那が、自分の力で何かを成したいと言うのなら、その邪魔をするつもりもないんだ。それが誰かを傷付けたり苦しめたりするものじゃないかぎり。


玲緒奈に対しても同じだと思う。


今も、玲緒奈は、僕の膝の上で、足をテーブルにぐいぐいと押し付けて揺らして、僕の仕事の邪魔をしてる。だけど、それを叱っても、今のこの子にはまだ、何が悪いのか理解はできない。


だから、僕は、今は叱らない。飽きるまで好きにさせて、収まったら仕事を再開するだけだ。


「やめて~」


とは、言うけどね。だけど玲緒奈は、僕が反応してくれるのが面白くて、


「ぷぷぷぷぷぷ」


って笑うだけなんだ。


『僕が困ってる』ってことを理解できるようになるまでは、『やめて』って言葉の意味を理解できるようになる以上の時間が掛かるかもしれない。


でもそれは、覚悟の上だ。



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