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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百十一 玲緒奈編 「沙奈子たちのために使いたい」

三月四日。木曜日。晴れのち曇り。




日本国内の感染者数が、千人を超えたそうだ。


そして明日から、沙奈子の学校では、『新型コロナウイルス感染症対策』として、臨時休校に入る。


本当に、まさかこんなことになるなんて、思ってもみなかった。歴史上や、他の国ではそんな話も聞いたけど、まさか日本で、僕が生きてる間にこんなことがあるなんて。


でも、そんな風に感じるということ自体、僕自身が、


『自分だけは大丈夫』


って思ってしまってたってことでもあるんだろうな。だとしたら、他の人がそんな風に思ってしまうことについても、強く責めることはできないって思うんだ。


だから僕は、面と向かって責めないようにしようと思ってる。だって、『お前が言うな!』って言われるのは目に見えてるし。


自動車だけじゃなく、自転車でも飲酒運転や無灯火や信号無視や暴走運転といったことを繰り返す人たちは、『自分だけは大丈夫』『自分だけは事故を起こさない』と思ってるんだろうからそんなことができるんだろうけど、僕がそれを注意したって責めたって、『自分だけは大丈夫』『自分だけは事故を起こさない』と思ってる限りは改めることもないだろうな。


それどころか逆ギレされて殺されでもしたら、沙奈子が、絵里奈が、玲那が悲しむ。玲緒奈れおなにも申し訳ない。


絵里奈も言われたんだ。


「格好つけてそういうのを注意できる自分を偉いと思ってる人は勝手にそう思っててくれていいですけど、いたるさんがそんなことで殺されたりでもしたら、私は、いたるさんを恨みます。そういうのを注意できないしないことを、私は、『ヘタレ』とか『腰抜け』とか思いません。たとえ卑怯でもなんでも、私たちのために生きててください。お願いします」


って。


そして、沙奈子にも。


「お父さんは、私のお父さんだよね……?。他の人のお父さんじゃないよね……?。他の人のことでお父さんが怪我したり死んじゃったりするのは嫌だ……」


テレビで、マスクをしてないことを注意した人が相手とケンカになって怪我をしたっていうニュースが流れてたこともあって、不安になったみたいだ。


「うん。分かってる。僕は沙奈子のお父さんだから。余所の人のために命を投げ出したりしないよ」


はっきりとそう言わせてもらった。


そんな風に言ってても、咄嗟に、つい、ってこともあるかもしれない。だけど、僕の命は、沙奈子たちのために使いたいと思う。


もしかしたらこんな風に思うのも、


『カッコつけ』


って言われるかもしれないけど、同じ『カッコつけ』なら、自分が納得できる方を選びたいんだ。



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