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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百三 玲緒奈編 「僕もやらなくていい」

二月二十四日。水曜日。晴れ。




僕は、沙奈子に、玲那に、玲緒奈に、手を差し伸べてきた。僕にできるだけのことをしようと努力してきたつもりだ。そんな僕の姿を見て、それを真似て、沙奈子が、玲那が、玲緒奈が、誰かに差し伸べられるようになるなら、それこそが『自立』というものなのかもしれない。


手を差し伸べる相手が、自分のパートナーだったり、自分の子供だったり、そこは、色々だろうけどね。パートナーというのも必ずしも『結婚相手』とは限らないわけで。


沙奈子は、実の両親からは、手を差し伸べてもらえなかった。勝手に生まれてきた邪魔者として疎まれて、虐げられてきた。だからこの子は、『誰かに対して手を差し伸べる』ということ自体を学んできていない。


人間は、学んでもいないことをできるほど、全能でもないと思う。中にはそういうことができる人もいるかもしれないけど、誰もができるわけじゃないと思う。


少なくとも僕にはできない。僕が沙奈子に対してやってきたことは、あくまで、その場その場で、沙奈子の表情や様子を見ながら、彼女が何を求めているかという点から推測しながら、本当に手探りでやってきたことがたまたま功を奏したというだけのことなんだ。こんな綱渡りなやり方がいつでも上手くいくと考える方がおかしいんじゃないかな。


むしろ失敗することの方が多い気がする。それが虐待事件とかって形で表面化するんじゃないのかな。


事件にまでは至らなくても、


『人の愛し方が分からない』


『人との接し方が分からない』


そういうのも、結局は、具体的な形で教わってないからなんじゃないかなって、気がするんだ。


僕は、沙奈子に、僕と同じような綱渡りをしてもらいたいとは思っていない。僕が上手くいったのは、『偶然の出会いに助けられた』っていうのがとても大きい気がしてる。そんな偶然がいつだって都合よく起こるはずがないよね。


だとしたら、沙奈子が僕と同じような『綱渡り』をした時、大変な失敗をしてしまっても、何もおかしくないと思うんだ。


それが分かっているなら、どうやって手を差し伸べればいいのか一緒に学んでいくのが、『親の務め』なんじゃないのかな。


『自分は親から教わってないのにそこまでやらなきゃならないなんて、不公平だ!』


って言う人もいるかもしれないけど、そういう考え方は大人として恥ずかしいんじゃないかな。少なくとも僕は、他人に向かって大きな声でそんなことは言いたいとは思わない。


恥ずかしいから。


もちろん、そんな風に思ってしまう時もある。『どうして僕が!?』って言いたくなることもある。


でもやっぱりそれを言い訳にするのは、大人として恥ずかしいこととしか思えないんだ。


だからって、他人に対してまで『そうしろ』とは言わないけど、だけどそれは、『僕もやらなくていい』という理由にはならないんだよ。



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