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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百二 玲緒奈編 「自分の生き方を自分で」

二月二十三日。火曜日。曇り。




今日は天皇誕生日で休日。




絵里奈は、玲緒奈のことについて、わざと手を抜くような人じゃない。僕はそのことを知っている。だから万が一、何かの事故が起こっても、それは、絵里奈の怠慢が原因だとは思わない。


そう思わないでいられる覚悟はできている。そう思わないでいられる相手を選んだ自信はある。


みんなが揃ったリビングで、絵里奈に抱かれてミルクを飲む玲緒奈の姿を見て、絵里奈も自分のことをちゃんと守ってくれる頼れる存在だと分かってくれたんだなと、何となく感じた。


こうやって、少しずつ世界が広がっていくのかもしれない。相手のことを知り、相手が自分にとってどういう存在かを知り、それを足がかりにして、この世界における<自分>を確立していくのかもしれないと、思えた。


だからこそ玲緒奈にとってどういう存在なのかを、彼女に丁寧に伝える必要があるんだろうな。『信じろ』と、強要するんじゃなく、ただ、信じるに値する存在であるとプレゼンテーションするというのが、人間同士のコミュニケーションなのかもしれない。


絵里奈はちゃんとそれを、丁寧に、玲緒奈にも分かるように、伝えてくれたんだ。絵里奈はそれが出来る女性だった。


ああ…、絵里奈を選んだことは間違いじゃなかった。でも同時に、きっと、玲那も同じことができたと思う。絵里奈にできて玲那にはできないということじゃない。玲那が絵里奈に劣っているというわけじゃない。優劣の問題じゃない。


あくまで僕にとっては、僕の『パートナー』は、絵里奈だっただけなんだ。


決して結婚は必須じゃないと今は思うけど、玲那にとっても人生を共にできるパートナーが現れてくれると、嬉しいんだけどな。


とはいえ、そのためのハードルは、とても高い。玲那の過去、殺人未遂という前科を持つという事実、自分の声で喋れないという現実、普段はネックウォーマーとかで隠してる首には目立つ傷跡。これら全てを受け止めてくれる男性が現れるというのは、きっと、大変な奇跡なんだろうな。


だから正直、それには期待していない。僕も、玲那自身も。


このまま、僕の娘として、一緒に暮らしていけばそれでいいと、思ってる。


結婚して自分の家庭を築くことだけが、幸せをつかむ方法じゃない。それだけが唯一無二というわけじゃない。


今の家族として互いに支え合えれば、それでいいんじゃないかな。


リビングの隣の和室でドレスを作っている沙奈子も、同じだ。自分で仕事をして、僕の扶養からは外れても、何時でも触れ合える、呼べば聞こえる、お互いの呼吸を感じられる距離で、支えあって生きればいい。


それと同時に、他の誰かと手を取り合って生きるなら、それでいいと思う。


僕たちはそれぞれ、独立した一個の人格だ。それぞれの生き方がある。自分の生き方を自分で作り上げつつ、望んで支え合えるなら、そうすればいいというだけだよね。



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