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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百九十四 玲緒奈編 「僕と立場が違ってるのは」

二月十五日。月曜日。雨のち曇り。




深夜から降り出した雨は、朝になっても結構な勢いだった。


実は今日は、打ち合わせのために出勤することになってる。


「気を付けてくださいね」


玲緒奈れおなを抱いた絵里奈に言われて、


「ああ、もちろんだよ」


はっきりと応えさせてもらった。絵里奈の出産の時にも慌てずに向かったんだ。それと同じだよ。常に最悪の事態を想定して、その中で確実に安全に行程をこなすだけだ。


バスを使ってもよかったんだけど、正直、『新型コロナウイルス感染症』の件が頭に引っかかってて、混雑してるバスでの通勤というのは選択肢になかった。


マスクがどの程度の予防効果があるものかは分からないけど、しっかりと付けていく。災害用のストックとして買った分の中から使って。明日には、星谷ひかりたにさんが言っていたマスクが『SANA』に届くらしい。そちらは基本的に『従業員用』として、玲那、イチコさん、田上たのうえさんに使ってもらうことになる。


僕たちにできることはする。その上で、もしものことがあったとしても、必要な対処を行うだけだ。


最悪の事態を想定しながらも、深刻になりすぎず、淡々と毎日を過ごす。


沙奈子が僕のところに来てから、ずっとそうしてきた。それが僕の日常だった。これからも、淡々と、ただ淡々と、いつか迎える人生の終わりの日まで、それを続けるだけだ。


こうして出勤し、昼過ぎには打ち合わせも終えて、三時には家に戻れた。と言っても、ここからはまた図面を起こさなくちゃいけないから、仕事は続くけどね。


会社では、半分くらいの人がマスクをしてた。元々、冷たい空気や乾燥した空気から喉を守る目的で日常的にマスクをしてる人は何人もいたし、すでに今から予防的に花粉症対策でマスクをしてる人もいたから、案外、違和感も覚えなかったな。僕がマスクしてても誰も何も言わなかった。


ただ、洲律すりつさんがいつものフリフリのドレスを着てマスクをしていたのは、さすがに違和感も覚えたけどね。


その洲律さんからは、


「沙奈子ちゃん、守ってあげてくださいね!。新型コロナなんかで沙奈子ちゃんのドレスがなくなったりとか、絶対、嫌ですから…!」


とも言われたり。


「そうですね。もちろん、守ります。僕の大切な娘ですから」


きっぱりと告げさせてもらう。


洲律さんが心配してるのは沙奈子自身じゃなくて、あの子が作るドレスなんだとしても、彼女にとっては沙奈子は『家族』じゃないんだから、僕と立場が違ってるのは当然なんだ。だから気にしない。



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