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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百九十一 玲緒奈編 「すぐにできないからって」

二月十二日。金曜日。晴れ。




建国記念日に寝返りを決めた玲緒奈れおなだったけど、それについてはただの偶然だから気にしないようにする。変に関連付けて盛り上がるというのも、僕たちにとっては何か違う気がするしね。


玲緒奈の首が据わったことに気付いたのも僕だし、初の寝返りを目撃したのも僕だというのも、傍にいる時間が一番長かったとしても、やっぱり偶然なんだから、自分を特別だとは思わない。


そんなことを考えると自分が思い上がってしまいそうな予感もある。


それと同時に、寝返りをするようになったからこそ気を付けないといけないことも出てきたな。僕たちが気付かないうちにうつぶせ寝になっててそれで窒息なんてことになったら、悔やんでも悔やみきれない。だから昨夜も、心配で深く眠れなかった。玲緒奈の気配を常に感じ取るようにしてたからね。


でも、昨夜は寝返りもなくておとなしく寝ててくれてた。さすがにまだ無意識に寝返りができるほどじゃないみたいだ。


今日も、僕が見てる前で何度か寝返りして見せてくれたけど、最初の時のそれを再現してる感じで、足を高く掲げてそれを振り下ろす反動で寝返りしてた。まだ彼女にとっては、まだまだそういう大事おおごとなんだろうな。


だけどきっとすぐに当たり前にできるようになる。そういう時に事故が起こるのかもしれない。『新型コロナウイルス感染症』も心配だけど、そういう身近な危険についても油断しないようにしなくちゃ。


あと、玲緒奈が起きてる時間も長くなってきた。僕があやしても寝てくれなくて、布団に下してもそのまま起きてて足を上げたり下げたり、メリーからぶら下がってるのをいじったりして遊んでる。


そう。遊んでるんだ。自分の意思で。大人には分かり難くても、赤ん坊にもちゃんと『自分の意思』がある。僕はそれを忘れたくない。そして、自分に接する大人たちの振る舞いを見て、自分がどう振る舞ったらいいかも学んでるんだ。言葉と同時に。僕を真っ直ぐに見詰める目が、はっきりとそれを告げてる。


『どうしたらいいのか教えて、パパ。あなたの真似をするから』


って。言葉じゃなくても、彼女の目がそう言ってるんだ。当然だよ。言葉が通じないからこそ、赤ん坊は『見て学ぶ』んだ。ものすごい勢いで、彼女の中に、


『人間としての生き方』


が構築されていってるんだ。


だから僕は、人間として、『人間との接し方の手本』を示す。


もちろん、すぐに完璧にはできない。こうやって毎日顔を見て話しかけていても、この子が実際に普通に喋れるようになるまでは何年も掛かる。それと同じことだよ。


すぐにできないからって『何も分かってない』わけじゃないんだ。



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