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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百八十八 玲緒奈編 「ちゃんと成長してるんだ」

二月九日。火曜日。晴れのち曇り。




昨日は学校を休んだ沙奈子だったけど、今日はすっかりいつもの様子に戻っていて、


「行けるかな?」


って聞いたら、


「うん」


とはっきり応えてくれた。普段からちゃんと見てるからこそ分かる。いつもの沙奈子だ。


よかった……。


実は昨日も、夕食の後、ずっと沙奈子を膝に抱いてた。玲緒奈れおなは絵里奈に任せて。


ここのところ、沙奈子に座ってもらうことが減ってたのも事実だから、『新型コロナウイルス感染症』でいよいよ大変なことになりそうな予感のストレスで体調を崩してしまったのかもと思ったんだ。


熱もない。咳もない。頭痛も腹痛もない。倦怠感以外の症状がまったくなかったし。それに、僕の膝に座ってる間にも、目に見えて元気になっていってたし。


しかも、玲緒奈も、首が据わってから以降、何か心理的な変化でもあったのか、ミルクの時に絵里奈が抱いていてもぐずらなくなったんだ。お風呂はまだ僕でないとダメみたいだけど、これは大きな進展だ。


玲緒奈もやっぱりちゃんと成長してるんだ。


それで言うと、今回の沙奈子は、僕の膝に座ってなかったことでストレスが溜まってしまったんだとしたら、『退行してる』みたいに感じる人もいるかもしれない。でも、沙奈子を傍で見てるからこそ思う。


『そういうことじゃない』


って。


むしろこれまでが、我慢しすぎだったんじゃないかな。虫歯が進行しててものすごく歯が痛いはずなのにそれを我慢してしまう方がおかしかったんだ。辛い時には素直に『辛い』と口にしてほしいと思う。こういうのは、『素直になっていい感情』だと思う。他人に対してあまり甘えられても相手もきっと困ってしまうだろうけど、家族に対しては、特に、親である僕や絵里奈に対しては、素直になってくれていいんだ。


そうやって『辛いという気持ちを素直に表に出せる』ようになりつつあるのかもしれない。


もちろんそれがただの僕の思い込みだっていう可能性も高いけどさ。


でも、沙奈子が辛そうにしてる時には僕がこうして支えるっていうのを具体的に示せたのも事実なんだ。


遠慮しなくていい。そのために僕はいるんだから。


こうやって、僕が行動で示して、そしていつか、沙奈子に子供ができた時に、今の僕の真似をしてくれたらいいと思う。それができるようになるまで、僕も何度も手本を示すから。


教わってもないことができるほど、人間は万能じゃない。僕自身が大した人間じゃないからこそそれが分かる。だから僕は、沙奈子や玲緒奈にしっかりと学んでもらわなくちゃと思うんだ。



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