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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百八十六 玲緒奈編 「少しだけホッとしたように」

二月七日。日曜日。曇り。




「クルーズ船エンジェルハイロゥ号での集団感染は、検査結果が判明した百名中二十名と、大規模なものとなっている模様です」


ニュースでまたそんなことを告げていた。


「百名中二十名とか、マジヤバくね?」


お掃除ワイパーで壁を拭きながら、玲那がそんなことを言う。


絵里奈も、ミルクを終えた玲緒奈れおなの背中をとんとんしながら、


「クルーズ船だとどうしても距離が近くなるから余計に感染しやすくなるんだとしても、これはもうかなり、いろんなルートで日本に入ってきてるって思った方がいいかもですね……」


硬い表情で言った。なるべく気にしないようにとは思ってても、『百名中二十名』という数は、さすがにインパクトがあったな。


「そうだね。この水際対策が功を奏してくれればと思うけど、正直、難しそうな気はする。だから、僕たちは僕たちで気を付けるようにしよう」


僕も、お掃除ワイパーでリビングの床を拭きながら応える。応えながら、和室の床をやっぱりお掃除ワイパーで拭いていた沙奈子に目をやると、いつもと変わらないようでいて、でも僕の目には、彼女の中にある不安が透けて見えてる気がした。だから、


「沙奈子。大丈夫。感染症なんだから、感染症対策をちゃんとすればいいはずなんだ。この船の場合は、まだそれが十分じゃなかったんだと思う。どうしても人間の心理として『自分だけは大丈夫』っていうのが働くだろうからね。確かに大丈夫じゃなかったからこうなったんだろうけど、心掛け次第で全然違ってくるんじゃないかな。だから僕たちは『自分たちだけは大丈夫』とは思わずに気を付けよう」


って、『父親として』はっきりと言わせてもらった。正直、それがどれだけ安心感を与えられるかはまったく分からないけど、それでも沙奈子は、


「うん」


と頷いてくれた。表情も、少しだけホッとしたように見えた気がした。




それから、みんなで手分けして二階の掃除を済ませて、僕が玲緒奈の相手をしてる間に、絵里奈はお風呂場の、沙奈子は三階の、玲那は一階の掃除を。


布団に寝かせた玲緒奈を見てると、しきりに頭を動かして、その反動で体も動かそうとしてる感じだった。それかと思うと、自分の脚をがしっと掴んで一緒に振ってみたり。


『もしかして、寝返りしようとしてる?』


そんな風にも思う。


首が据わるのが少し遅い気がしてて、でも気にしないようにするために敢えて触れないようにしてたけど、なんか、実はもっと前から首が据わってたのを僕たちが気付いてなかっただけのような気がしてきた。


こういう部分も、きっと、千差万別なんだろうな。だから他人と比べてどうとかなんて、本当に関係ないってことか。



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