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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百八十五 玲緒奈編 「家庭に安らぎなんて」

二月六日。土曜日。晴れ。




『家庭に安寧があれば外での仕事を頑張れなくなる』


そんなことを言う人がいるけど、僕の実感はまったく違う。家庭に安寧があるから、家に帰れば安らげて癒されて活力を取り戻すことができるからこそ頑張れると思うんだ。


今の僕がまさにそれだから。


現状では在宅仕事だからまた少し状況は違うとしても、出勤して仕事をしてた時は、クライアントの言うことが二転三転してその度に図面を書き直してたりということがあっても、家に帰って沙奈子や絵里奈や玲那と一緒に過ごせばリセットされて、頑張ることができた。


確かに世の中には、そういう安らぎがあるとそっちに依存してしまって外に出られなくなるタイプの人もいるのかもしれない。でも、そんなごく一部の人の在り方を全体に当てはめようとするのは迷惑千万としか思わない。


少なくとも僕は、心を抑え付けて無視して殺してロボットのように何も考えず感じないようにして働いていた頃の自分に戻りたいなんて欠片も思わないよ。今の僕の方が、あの頃の僕よりもよっぽど強い。


あの頃の僕は強かったんじゃない。弱い自分を見ないようにしていただけだ。それがたまたま危ういバランスを保ててただけだ。ほんのちょっとしたきっかけで壊れてしまう程度のバランスで。


帰りたくもない家庭だからこそ外で仕事を頑張れるっていう人はそうしてくれてていいと思うけど、じゃあ、そういう人は何のために家庭を持ったんだろう?。


自分の社会的体裁を保つため?。家庭そのものが、その人にとっては自分の体裁を整えるための『道具』でしかないということ?。


僕にはまったく共感できないから、僕はそれを真似ない。


波多野さんが、以前、バイト先で大きなミスをしてしまった時、もし、それが理由でバイトをクビになったとしても、山仁やまひとさんは待つと言ってくれた。家を追い出したりしないって。イチコさんも、大希ひろきくんも、あたたかく彼女を受け入れて、癒してくれた。だからこそ波多野さんは、自分のミスから逃げる必要がなかった。たとえクビになったとしても、帰れる場所があったから。


職場では、さすがに彼女のミスによる実際の損害が生じたから、叱らないわけにはいかなかったとしても、『家庭』には関係ない話のはずなんだ。クビになったとしても、仕事はまた探せばいい。


だから波多野さんは、ちゃんと自分で頭を下げることができた。


自分の失敗と向き合うことができた。


そういう人もいるんだよ。


それを無視して、


『家庭に安らぎなんて必要ない』


とか、単に、家庭を持つのに向いてないタイプが自分の欠点を誤魔化そうとしてるとしか思えないな。



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