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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百八十二 玲緒奈編 「完全には打ち消せなくても」

二月三日。水曜日。晴れ。




今日は節分だけど、元々僕たちはそういう行事には興味がない上に、こういう状況だからね。


そんな中でも、僕は実感していた。


『こうして、僕は、親として、玲緒奈れおなと長い時間を過ごしてる。絵里奈を除けば、僕以上にこの子を見てる人はいない。沙奈子や玲那でさえ、ここまでじゃない。ましてや赤の他人なんて、たぶん、比べるのも馬鹿らしいくらいだろうな』


って。


玲緒奈の顔を、体温を、息遣いを、鼓動を、声を、その存在そのものを、僕はこうして一日の大半、感じ取ってる。それはつまり、玲緒奈から見ても、一日の大半、僕や絵里奈を見て感じ取って過ごしてるってことなんだ。


もし、三歳から玲緒奈を保育所に預けるとしても、卒園までのたった二年や三年、しかも一日の半分にも満たない時間を一緒に過ごしただけの他人に、この子のすべてが決められてしまうなんて、やっぱりおかしいよ。一緒に過ごしている時間も密度も比較にならない。それでどうして、親以上の影響を子供に与えられるって言うんだろう。


それで親が負けるというのは、つまり、赤の他人よりも自分の子供と向き合ってないっていうことじゃないのかな。


そんなの、いくらなんでもおかしくないかな。


「愛してるよ、玲緒奈。僕のところに来てくれてありがとう」


他人が口にするには憚られるような、この子の存在すべてを肯定するための言葉も、態度も、誰憚ることなくこの子に直接向けることができるんだ。


これでどうして、赤の他人に負けられるんだろう。


抱き締めて、頬や額にキスをして、なんて、抱き締めるのはともかく、保育士が預かってる子供にキスとかしたらそれこそ問題じゃないのかな。


それに、僕は、自分が望めば、状況さえ許せば、三十分でも一時間でも、玲緒奈一人を構ってることができる。沙奈子や玲那がいる時でも、沙奈子と玲那と玲緒奈との三人だけで済むけど、保育士は一人の子供だけにかまけてることはできないよね。


保育士でさえそうなんだから、ただの他人なんて、親に勝てる道理がないんじゃないのかな。


それなのに『他人の影響』が言い訳になると考える方が、おかしくない?。


僕にはとてもそれが言い訳として成立するとは思えないんだ。


他人が何か良くない影響を与えようとしても、僕がそれを打ち消してしまえると思う。完全には打ち消せなくても、『上書き』することはできるはず。


沙奈子が、学校でちょっと嫌なことがあっても、家に帰れば僕がそれを帳消しにしてたみたいにね。


沙奈子に辛く当ってた時の千早ちゃんのことだって、今はもう、まったく気にしてないって。




ところで、玲緒奈の方は、なかなか首が据わらないなとちょっと心配もしてたのに、首が据わったと思ったら途端に自分で頭を持ち上げて、「ふんす、ふんす!」と、なんだか自慢げに僕たちを見るようになった。


「現金なやつだなあ」


そんな玲緒奈を見ながら、玲那が、言葉とは裏腹にデレデレになってたりもしたのだった。



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