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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百八十一 玲緒奈編 「首がやっと据わったみたいだ」

二月二日。火曜日。晴れ。




どうやら、玲緒奈れおなの首がやっと据わったみたいだ。三ヶ月が過ぎた頃には自分でけっこう頭を動かしてたからそろそろかと思ってたけどそこからなかなか進まなかった。だいたい三ヵ月半くらいでって話だったから、正直、ちょっと心配もしてたんだ。


だけど、玲緒奈本人はすごく元気そうだったから気にしないようにと、玲緒奈を信じるようにと、自分に言い聞かせてたのが、これでホッとできたよ。




こうやって今は玲緒奈と向き合いつつ、僕は、『親子関係』も結局は『人間関係』なんだっていうことを沙奈子から教わった。


本来は叔父と姪という関係性であっても、僕は沙奈子の保護責任者で、沙奈子も僕のことを『お父さん』と呼んでくれてて、実質的には『親子』だけど、僕は沙奈子のことをあくまで『人間』として接することを心掛けた。


沙奈子が僕を信頼してくれてるのは、僕が彼女を自分と同じ人間として接してたからだと思う。そしてそれは、千早ちはやちゃんや結人ゆうとくんに対しても同じ。世間からは『クソガキ』みたいに言われることも有り得る二人も、確かに人間なんだ。


もちろん千早ちゃんは今ではとてもいい沙奈子の友達だけど、知り合ったばかりの頃には沙奈子にきつく当たってた事実も、消えてはなくならない。僕も沙奈子も恨んでなんかいないけど、かつての千早ちゃんの振る舞いを見ただけで彼女のことを批難する人もいるだろうな。


『人間はどうせ変わらない』


と言って。だけどそれを言う人自身が、僕には誠実には見えないんだ。『変わらない』と一方的に決め付けるその姿勢のどこが誠実なのかが。


変わらない人がいることは事実だとしても、変わろうとしてる人も確かにいるんだ。千早ちゃんや結人ゆうとくんのように。その事実を認めないことの何が誠実なのか、僕には分からないよ。


今、僕の膝の上で穏やかに寝息を立てる玲緒奈れおなを見ればこそ、この子は僕と同じく人間で、そして、沙奈子も千早ちゃんも結人くんもやっぱり同じなんだって実感する。決して別の生き物なんかじゃない。


もし、千早ちゃんや結人くんが僕と絵里奈の子供として生まれてきてたら、以前の二人のようには育たなかったという印象しかない。


もちろんこれは、千早ちゃんのお母さんや、結人くんのお母さんのことを否定するために言ってるんじゃない。『たられば』は何も解決しない。だけど、玲緒奈に二人と同じ道を歩ませないためには必要なことのような気もする。


『他人からの悪影響で自分の子供が歪んでしまった』


なんて、それ、『他人の所為』にしてるよね?。僕はそんな風に他人の所為にしないためにも、今から、玲緒奈に『手本』を示していきたいんだ。部下を威圧したり暴力で従わせようとするパワハラ上司は、どこで、誰から、そんなことを学んだの?。たとえ、自分も上司からそんな風にされてきたんだとしても、どうしてそれを『正しいこと』だと思ってしまったの?。親がそれを正しいことだと教えたの?。


もし、親はそれを正しいことだと教えなかったのなら、どうして自分の親の教えを蔑ろにするんだろう。



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