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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百七十九 玲緒奈編 「時間さえ経てば誰だって」

一月三十一日。日曜日。晴れ。




「WHOが、『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態』を宣言しました」


ニュースがまたそんなことを告げている。なんだか不安になるような話ばかりだ。


でも僕たちはこれまでだってずっと、不安の中で生きてきたはずなんだ。沙奈子が僕のところに来た時だって、不安しかなかった。それでもただただ足掻いて何とかやってきたんだ。これからだって同じだよ。


人生っていうのは、こういうことの連続だ。むしろ、まったく何もない平穏な時の方が少ないと思う。『SANA』を立ち上げて玲那が社会復帰し、ようやくこうして家族が揃ってさらに玲緒奈れおなも生まれて幸せな時間を過ごしてたから、また大変な状態になるなんて勘弁して欲しいというのは正直な気持ちだけど、大丈夫。僕たちなら乗り越えていける。


今日も、星谷ひかりたにさんと一緒に、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんが来て、沙奈子とお昼を作ってた。そこに、結人ゆうとくんも、今日は一人で来て。


そう。『鷲崎わしざきさんに連れられて仕方なく』でも、波多野さんに誘われてでもなく、自分で。


だけど、僕たちに対して挨拶をしてくれるわけでもない。ただ沙奈子たちがいるからっていうだけの理由。


それでもいい。それがいい。彼がそうやって自分から来てくれるようになったっていうだけで、大変な進歩なんだ。それだけ僕たちが彼にとって信用に値する相手だってことだからね。


『信用しろ』とか『尊敬しろ』とか言わなくたって、信用したり尊敬したりっていうことはあるよね。


つまりそういうことだと思う。その人にとって信用するに値する、尊敬するに値する、そういう人でいられればってことだよね。


むしろ、『信用しろ』とか『尊敬しろ』とか強要してくる人は信用も尊敬もできないよ。それを信用できる尊敬できる理由が分からない。


仕事でも、顧客に対して『自分を信じてください』みたいなことを言ったりする場合もあるとしても、でもそれは結局、自分が顧客から信用されるような仕事をしてみせることが大前提で、それもなしで信用してもらえるわけじゃないよね?


僕たちはその大前提を守ろうとしてるだけなんだ。相手に信用してもらうには信用に値する存在であることを示すっていうさ。


『親だから』『大人だから』『教師だから』そんな肩書きだけで信用してもらおうというのはおかしいよ。ましてや『親』や『大人』なんて、なにか特別な努力を経てなれるものでもないよね? 親は子供ができればなれるし、大人なんてそれこそ、時間さえ経てば誰だって自動的になれるものなんだから。



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