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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百七十八 玲緒奈編 「感情的になって騒いでも」

一月三十日。土曜日。晴れ。




昨日、チャーター機で帰国した人たちの中にも、三人の感染が判明したって。しかも、それとは別に京都でも感染者が確認された。


日本政府も、『新型コロナウイルス感染症対策本部』を立ち上げたと。


さらに星谷ひかりたにさんが、


「世界全体では感染者数が八千百人に達して、『SARS』の時の世界全体での感染者数を超えてしまったそうです。これは、大変な勢いです。感染力の高さが窺えます。封じ込めにも明らかに失敗していますね。正直、コントロールを失っている印象があります」


とも言ってた。


「ダメじゃん……」


玲那が苦々しく笑みを作る。僕も絵里奈も沙奈子も、どういう表情をしていいのか分からなくて困ってしまった。ただ、今のところ、『SANA』としては、星谷さんの対処のおかげもあって、これといって影響も出ていない。


商品もちゃんと届いてるし、売り上げも好調だ。ただ、この先はどうなるかは分からない。分からないだけに、


「私は、普通にしてていい……?」


沙奈子の問い掛けにも、


「そうだね。沙奈子は自分のやりたいようにやってくれたらいいと思う」


としか言えなかった。すると星谷さんも、


「はい。現状では直接の影響が出ていないのですから、あまり神経質になる必要もないでしょう。また、今後を見越して対策を行うのは私の役目です。沙奈子さんには、これまでどおり、ドレス作りに集中していただきたいと思います。沙奈子さんがドレス作りに集中していただけるように私がいるのです」


きっぱりとそう言い切ってくれた。


本当は、僕が父親として不安を取り除いてあげたいんだけど、正直、僕にできることなんてたかが知れてる。僕にできないことを補ってくれる人に出逢えたことは本当に幸いだった。星谷さんがいなければそもそも『SANA』を立ち上げられていなかったから、逆にこんな心配をすることもなかったんだろうけど、『SANA』ができたからこそ玲那が社会復帰を果たせたのも事実なんだ。


物事というのは、常にいい面だけがあるとは限らない。いい面と、好ましくない面とが同時に存在するのがむしろ当然なんだと思う。第一、『SANA』を立ち上げた時にはまさかこんなことになるとは想像もしてなかったし。


だからこそ、好ましくない面が表に出て来た時に大人としてどう対処するかが、大事なんだろうな。僕の振る舞いが、沙奈子にとっての『手本』になるんだ。


感情的になって騒いでも、何も解決しない。それは紛れもない事実なんだから。



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