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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百七十七 玲緒奈編 「実は的外れな努力だったと」

一月二十九日。金曜日。晴れ。夜から雨。




「本日、チャーター機で帰国した邦人二百五名が、機内にて検疫を受けた模様です」


と、ニュースが告げる。


さらに中国国内では感染者が六千人を超えて、死者も百三十人を超えたそうだ。


『SARS』の時には感染者が五千人強だったのに、それを超えてしまったって。


やっぱり『SARS』より大変なことになってるんだ。それが数の上でもはっきりしてしまった形なのか。


でも、正直なところ、僕としては、今日はまた会社に行かないといけないので、玲緒奈れおなの方が気になるかな。


「玲緒奈、あんまりママを困らせないでね」


僕はミルクをあげながら笑顔でそう話しかけるけど、当の玲緒奈は、


「むっぷ、むっぷ」


と、どこ吹く風といった感じでミルクをただただ勢いよく飲むだけだった。


こうしてみると、確かに何も分かってくれてないようにも思える。だけどそうじゃない。言葉だって今の時点ではちゃんと話せないけど、実は少しずつ少しずつ染み込んでいっていずれは話せるようになるのと同じで、ここでの接し方がこの子の『他人との接し方の土台』になるはずなんだ。その土台作りを丁寧にしないと、いくら綺麗な『建前』を乗せたって、それはその人の『本質』にはならないと思う。


僕も、沙奈子も、絵里奈も、玲那も、『土台』はがたがたで、その上に危ういバランスで『建前』が乗ってるだけなんだ。だからこそ、お互いに気遣い合って支え合って、今にも崩れそうなそれをぎりぎりのところで持ちこたえさせる必要があるんだ。


だけど、『土台』がしっかりしていれば、それだけ余裕も生まれると思う。苦しいことがあっても、耐えられると思う。土台が駄目だから、きっと、些細なことでボロが出るんだ。ボロを出さないようにするために、別の形で取り繕う必要が出てくるんだ。


幸い、僕や沙奈子や絵里奈や玲那は、そのために用意できるものをそれぞれ持ち合わせていたから何とかなってる。同時に、こうやって出逢えたという『運』にも恵まれただけというのもある。


だからこそ、せっかくの出逢いを無駄にしないためにも、僕たちは努力を続ける。努力もせずに何かを得ようとするのはムシが良すぎるから。


同時に、自分がしている努力が、ちゃんと道理に適ったものであるのかどうかも、考えないといけないだろうな。


上手くいかない時、人間はついつい、


『自分はこんなに努力してるのに!』


って考えてしまいがちな生き物なんだろうけど、『自分では努力しているつもり』でも、実は的外れな努力だったということも多いと思う。


そうならないためにも『客観的に考える』ことが必要なんだろうな。



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