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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百七十六 玲緒奈編 「僕たちは自立した人間だ」

一月二十八日。木曜日。晴れ。




今日も日本で新たに三例の感染が確認されたらしい。しかも、ツアー客を乗せたバスの運転手で、本人に渡航暦はなかったって。


つまり、人から人への感染が、日本でも初めて確認されたってことか。


ここまでくると、さすがに、


「いよいよ来たの、かな…?」


玲那がテレビのニュースを見ながら呟いた。その玲那の膝には、沙奈子の姿。玲那に抱き締められた沙奈子も、不安そうにテレビを見てる。


「かもしれないね……」


ミルクの用意をしながら僕もそう呟くと、玲緒奈れおなにおっぱいをあげていた絵里奈が、ぎゅっと玲緒奈を抱き締める。まさか、生まれたばかりでこんな大変なことに直面することになるとか、つくづく『神様』ってやつは残酷だと思う。


だから僕たちは、神様なんか当てにしない。自分たちで自分たちの幸せを作り上げていく。


『神様が自分たちを幸せにしてくれる』


なんて、考えない。


だって、『神様』をダシにして人を殺したり殺し合ったりなんてことも起こってるからね。


全然、当てにはできないよ。


それに、人間は、これまでだって、大変な災害の中や、戦争の中でも、生きて、暮らして、命を育んで、自分たちなりの幸せを掴んできたんだ。これからだって同じことだと思う。


沙奈子にも、今は僕だけじゃなく、絵里奈や玲那もいる。みんなで支え合えばいい。


玲那に縋るみたいに体を預けてる姿が、それを物語ってる。実はそうやって沙奈子を膝に座らせてる玲那も、沙奈子の存在を実感することで癒されてるんだ。


そうしてお互いに満たされて、沙奈子は学校に。玲那も一階の事務所に。


僕は玲緒奈のミルクを終えて、膝に乗せてあやしながら仕事を始める。


絵里奈は、哺乳瓶を熱湯消毒して、お掃除ワイパーで部屋の掃除を始めた。僕も仕事を始めたんだから、自分もちゃんと家のことをしなきゃって思ってるんだ。四時間はまとめて寝られるようになったことで、体調もほとんど回復したそうだし。


それぞれが、それぞれの役目を果たす。


誰か一人が頑張ってみんなを支えるんじゃない。あくまでお互いに支え合う。それが僕たちの在り方。


他人がどうやってるのかなんて関係ない。僕たちは自立した人間だ。見ず知らずの赤の他人に合わせることで自分の存在を確かめてるわけでもない。僕たちは僕たちのやり方で生きて、幸せを掴む。


「ぷっぽ、ぷっぽ」


手足をばたつかせながら声を上げる玲緒奈に、


「はあい、ぷっぽぷっぽですか?」


声を掛けると、


「ぷぷぷぷぷ」


と笑ってくれたのだった。



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