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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百七十四 玲緒奈編 「そんな大それたことに」

一月二十六日。火曜日。晴れのち雨。




日本で四例目の感染確認。中国ではさらに二千人の感染が確認されて、死者も五十人を超えたって。


「なんか、すごい勢いで増えてない……? 『SARS』の時ってこんな感じだったっけ?」


ニュースを見ながら、玲那が呟いた。


「そうだね……」


そうは応えながらも、正直、『SARS』の時のことなんて、ほとんど覚えてない。『へ~…』とか思いながら何となくニュースを見てただけで、それこそ他人事だったし。


ただ、さすがにちょっと心配になってくる。星谷ひかりたにさんも、


「いよいよ物流に大きな影響が出始めています。なるべく影響が出ない輸送ルートに変更しようと思いますが、よろしいですか?」


と、少し険しい表情で絵里奈に告げる。


「分かりました。よろしくお願いします」


絵里奈も、即断即決だった。


これが、もう少し大きな企業だったら、役職を何人も集めて会議をするところなんだろうけど、『SANA』は現在、絵里奈と星谷さんの二人だけで重要なことを決定している状態だった。いずれはそれじゃダメになってくるんだろうけど、今のところは、その身軽さが『SANA』の持ち味なのかもしれない。


それに、今は、売り上げも好調なんだ。この時点で商品の供給を滞らせるのは得策じゃないと、素人の僕でも思う。


加えて星谷さんは、自身のつてを使って、大手の商社が使ってるルートに便乗するということもやってるらしい。普通は、ただの個人経営の零細企業にできることじゃない気がする。というのも、星谷さんの方で独自で行ってる『事業』が、海外のそれなりに大きな企業と連携してのものだそうで、そちらの品物とかとの抱き合わせで輸送してるとも言ってたな。


本当に、僕には彼女が何をやっているのかがまったく分からない。玲那の『声』を取り戻す研究とも関係あるものらしいけど、結構、大きなプロジェクトになってきてるみたいだ。


そんな大それたことに僕たちの会社が便乗してていいんだろうかと心配にさえなってくる。


それについては星谷さんは、


「ごく普通の商取引に過ぎません。まとめて輸送すればそれだけコストが下がりますし、あちらにもメリットがあることですからそのメリットがあるうちは互いに利用し合えばいいんですよ」


と、平然としてる。


でも、その上で、


「ただ、玲那さんの『声』を取り戻す研究の方については、どうやら、先方に主導権を握られてしまったようですが。なので、あちらの方で先に商品化することになりそうです。私としては日本企業主導で行いたかったのですが、やはり、『バリアフリー化』や『ハンディキャップ克服』に対する理解や意欲の点で、後れを取っているのは否めません。あちらはそういうものを利益に変えることに躊躇いがなく、鼻の利く出資者達も多いということでしょうね」


少し、悔しそうにもしてたのだった。



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