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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百七十一 玲緒奈編 「難しく考えずに生きたいのなら」

一月二十三日。土曜日。雨。




『新型肺炎』のニュースで、発生地と見られてる都市の交通網をストップして、事実上の封鎖状態にしたって話が。


「マジか……」


玲那が呟いて、僕や絵里奈や沙奈子も、思わず画面を凝視する。


でも、それでも、まだ、どこか『他人事』だった。エボラ出血熱の時にも聞いた話だし、エボラ出血熱は日本までは来なかったし。


ただ、同時に、星谷ひかりたにさんの言ったとおりに備えはしてて、その点での安心感もある。


だからこそ、


「怖がり過ぎないようにしなくちゃね。こういう時って、怖がりすぎてパニックになるのが一番マズいみたいだし」


「うん、そうだね」


「そうですね」


「うん」


僕の言葉に、玲那も絵里奈も沙奈子も頷いてくれた。


正直、僕に大したことができるわけじゃない。どんなに頑張ったって家族を守るのが精一杯……、ううん、家族さえ本当に守りきれるのかどうか自信がない。英田あいださんだってきっと家族を守ろうとしてただろうけど、お子さんは交通事故で亡くしてしまったし……。


そういうことがあるのが人生だ。


だからいつだって覚悟は持ってなきゃって思う。思いつつ、必要以上に怖がりすぎて余計なことをするのがまた怖い。


『自分の気持ちに素直になる』ことが尊いみたいな風潮もあるけど、だからって冷静さを失っちゃ何もかも台無しにすることだってある。沙奈子の父親である僕の兄や、玲那の実の両親や彼女を『買った』客や、千早ちはやちゃんのお母さんやお姉さんたちや、波多野さんお兄さんや、田上たのうえさのお母さんや弟くんや、結人ゆうとくんのお母さんや、館雀かんざくさんは、


『自分の気持ちに素直になった』


からこそ、自分の家庭を壊してしまったり、人を傷付けたりって、したんだよね?。玲那を『買った』お客や、波多野さんのお兄さんのように見ず知らずの女性に乱暴したっていう人も、『自分の気持ちに素直になった』からこそそれをしたんだよね?。


いいように見える部分ばかり取り上げて美化して、それでリスクについては見て見ぬフリっていうのは、大人のすることなの?。


だから僕は、『素直になっていい気持ち』と『素直になっちゃいけない気持ち』というものがあるというのを、ちゃんと、自分の子供たちには伝えていきたいんだ。


『そんなことばっかり考えてて疲れないか?。生き辛くないか?』なんて言う人の言葉には耳は貸さない。そう思って難しく考えずに生きたいのなら勝手にしてくれればいいけど、そういう人とは関わり合いになりたくもないな。


ましてやそれで誰かを傷付ける人とはね。



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