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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百七十 玲緒奈編 「保障は何もないし」

一月二十二日。金曜日。雨。


今日は久しぶりに本格的な雨だった。




『新型肺炎』についてのニュースが続く。アメリカのある都市の学校は、予定されていた交換留学生の受け入れを中止したとか。


星谷ひかりたにさんも、ますます忙しく動いているらしい。外国の知り合いとも頻繁に連絡を取り合って情報収集を図ってるとも。


昨日は、波多野さんが結人ゆうとくんと一緒にうちに来て、


「ピカに言われたとおり、ティッシュとトイレットペーパーと消毒用のアルコールと使い捨てマスクとナプキンとカプメンとか揃えといた。織姫さんとこも万事オッケーだって」


って言ってた。星谷さんが実際に外国に行ってまで情報を得たっていうのが説得力になってて、山仁やまひとさんのところや田上たのうえさんもしっかり備えたって。


ただ、千早ちはやちゃんは、


「うちはダメだね。私以外、誰も気にしてないよ。こりゃ、もしものことがあったら全滅かもね……」


呆れたように肩を竦めながらそう言ってた。僕と絵里奈はビデオ通話ごしだけどそんな彼女の様子に、なんとも言えない気分になる。


なるけど、正直な話、僕だって、星谷さんに言われたんでなければ、そこまで真剣に聞いてなかった気がする。


『言っても、これまでだって大丈夫だったんだし』


と心のどこかで思ってしまってただろうな。実際、『SARS』とかの時には、ほとんど気にしてなかったし、備えもしなかった。間違いなく星谷さんが言ってくれたからだよね。


地震や台風とかについては、阪神淡路大震災の時には僕も結構な揺れを感じたし、台風も、洪水までは経験ないけど小さな川が溢れたり、大きな河も危険水位までいったりしたのは見てるからそれなりに実感ある分、備えもした。だけど、疫病というのは、具体的には思いつかない。インフルエンザは身近でも、僕も周りも、そんなに気にしてなかったし。


だけど、考えてみればインフルエンザだって、毎年、大変な流行して、決して少なくない人が亡くなってたりするのに、気にしないというのもおかしいのかもしれない。感覚が麻痺してしまってるのかも。


今度の『新型肺炎』がどういうことになるのかは分からないけど、やっぱりまだ実感がない。


でも、そうだよね。『今まで大丈夫だったからこれからも大丈夫』っていう保障は何もないし、『自分だけは大丈夫』っていうのもないはずなんだ。英田あいださんだって、自分の子供を交通事故で亡くすなんて思っていなかったかもしれないけど、お子さんを亡くして、さらに自分たちも洗剤の誤使用による塩素ガスの事故で重症なんてことも起こるんだ。


やっぱり、『絶対大丈夫』『絶対安全』っていうのはないんだろうな。


沙奈子や玲緒奈を守るためにも、それをわきまえておかないと。



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