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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百六十九 玲緒奈編 「彼女の根幹にあるのは」

一月二十一日。木曜日。晴れ。




なにやら、『新型肺炎』が広がりを見せてるらしい。


それについて星谷ひかりたにさんが、


「中国で、物品の流通に影響が出始めているようです。これに伴って、日本への流通にも影響が出る懸念が高まってきました。『SANA』のドレスはご存知のようにベトナムで生産を行っていますが、中国を中心に流通が乱れると、間接的に影響が出る可能性が高いでしょう。具体的な対応策が求められています」


とのことだった。


でも、僕はそういうことにはまったく詳しくない。何をどうすればいいのか、さっぱり分からない。絵里奈はいろいろと星谷さんから教わってたらしいけど、それでも、まだまだ勉強不足で理解が追いついてない。


それで結局、絵里奈が、


「その辺りについては、星谷さんにお任せします。今の私ではそれを承認することしかできませんから」


と告げるだけになった。


正直、この状態で、もし、星谷さんが悪意を持って何かをしようとしても僕たちにはそれを止めることもできないだろうな。だけど、前にも言ったと思うけど、それでもいい。星谷さんになら利用されてもいいと思う。


僕や絵里奈は、たぶん、世界を動かすような才能は持ち合わせていない。完全に自分たちだけで小規模にやってるだけなら、それこそ、以前のようにネットフリマのような形でなら、何とかできたかもしれない。でも、外国の企業に生産を依頼することにした時点で、僕たちの手には余るようになったんだ。結局、僕たちはどこまでいっても『使われる側の人間』なんだと思い知らされる。けれど、だからこそ、『誰に使われるか?』という部分くらいは自分で決めたい。


そういう意味では、星谷さんは、信頼できる人だから。


彼女は、大希ひろきくんに相応しい自分でありたいと願っているだけだから。他人を踏みにじり、蔑ろにすることは、『大希くんに相応しい』とは言えないから。


うん。星谷さんは理念や大儀で動いてるわけじゃない。彼女の根幹にあるのは『大希くんへ個人的な想い』で、それを基に動いてるんだ。


だからこそ彼女を信じられる。ご大層な理念や大儀は、どうしてもその時その時の状況によって軸足を置くところが変わってしまうんじゃないかな。その点では、大希くんが変わってしまわない限り、星谷さんは『彼に愛される自分でありたい』っていう想いを捨てられない気がする。


なにしろ、大希くんが『元死刑囚の孫』だというのを知ってもなお、彼女の気持ちは変わらなかったんだから。


星谷さんの『想い』は目先の損得程度で変わってしまうようなものじゃないことを、僕たちは知っているんだ。



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