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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百六十五 玲緒奈編 「お互いにそういう気持ちに」

一月十七日。日曜日。晴れ。




昨日、沙奈子が水族館でスマホで撮ってきた映像を玲那があれこれしてくれて、リビングのテレビで流すことができた。多くがクラゲの映像で、ゆらゆらと水中を漂うクラゲの姿が延々と映し出されている。


もっとも、実際に撮影してたのはほとんどが千早ちはやちゃんだそうだけど。沙奈子はスマホの使い方がいまいちよく分かっていなかったから、千早ちゃんが動画を撮影しながら使い方を教えてくれたって。


これからはこの辺りのデジタルデバイスの使い方も分かっていった方がいいのかもしれないものの、沙奈子はどうもその辺りについては興味自体がないみたいで。


いずれそういうのが不利に働く可能性もあるとしても、その時はその時で考えればいいかな。


「ぷーぷ、ぷお?」


テレビの画面をゆらゆらと漂うクラゲの姿を、玲緒奈が興味深げに見詰めてた。


「クラゲだよ。クラゲさん」


絵里奈が指で指し示しながら言うと、


「ぷえ…?」


玲緒奈がそう応えたんだ。それがなんだか『クラゲ?』って言ったように聞こえて、


「そうだね。クラゲさんだね」


って僕も応えてた。


もちろん、玲緒奈が『クラゲ』って言ったつもりでそう言ったのかどうかは分からない。分からないけど、そう考えた方が楽しい気はするかな。


それからも、玲緒奈は、しばらくクラゲを眺めて、しきりに手足を動かしてた。首が据わって自分でお座りできるようになったら、もっと違った反応も見せるかな。なんだかそれが楽しみだ。


「ふっほ、ふっほ」


と手足をばたつかせる玲緒奈を見ながら、僕と絵里奈も、見つめ合った。見つめ合って、どちらからともなく顔を寄せていって、キスを交わしてた。


まったく化粧っけのない、目の下にはまだクマも浮かせた絵里奈のことが、無性に愛おしい。だからつい、そのまま情熱的なキスになって、


「みんな一階にいるのに……、玲緒奈が見てるのに……」


濡れたような艶っぽい目で僕を見ながら、絵里奈が言う。でも、拒んでないのも分かってしまって……。


「二人目ができちゃうかもね……」


僕もそう言いながら、また、唇を重ねた。


こんな時に、と思うけど、でも、お互いにそういう気持ちになってしまったら、止められなかった。たぶん、どっちかが乗り気じゃなかったら、抑えられてたはずだけどね。


玲那は、さすがに大人だしよく知ってるから、気を利かせてくれる。


沙奈子は……、中学生だからちょっとあれだけど、実は、兄のところにいた頃には、何度も見た、と言うか、沙奈子がいてもお構いなしで、ってことが何度もあったそうだ。


「あの人たちのことは怖かったけど、お父さんとお母さんなら平気……」


とは、言ってくれてるんだ。でも、『気を遣ってくれてるんだろうな』っていうのは分かってしまうから、甘えすぎないようにはしなくちゃとは思う。なるべく、悟られないようには、ね。



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