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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百六十三 玲緒奈編 「確かに笑ってるんだ」

一月十五日。金曜日。晴れ。




最近、ようやく四時間くらいはまとまって寝られるようになってきた。一度に飲むミルクの量もかなり多くなってきたと思う。


それでも、布団に下そうとするとぐずるので、結局、完全に寝付くまでは膝に抱いてることは変わりない。玲緒奈を膝に抱いてあやしながら、仕事をしてる状態だ。さすがに最初はなかなか集中できなかったけど、慣れてくると平気になった。


「ぷーぽ、ぷーぽ」


「はあい、なんですか?」


玲緒奈が声を上げると、僕も返事をする。無視はしない。すると、


「ぷぷ、うぷぷ」


って感じで笑ったりするんだ。そう、明らかに『笑ってる』。笑ってるみたいに見えるんじゃなくて、確かに笑ってるんだ。


これは、絵里奈に対しても見せてくれるものだった。だから、玲緒奈は、『パパが好き』なだけじゃない。ちゃんとママのことも好きなんだよ。『お風呂でお尻を洗う時やミルクの時にパパじゃないと泣くからママのことが好きじゃない』じゃなくて、『ママのことも好きだけど、今はパパがいい』ってだけのことだと思う。


それをわきまえずに『どうして?』と嘆いたって何も解決しないんだろうな。だって、別に嫌われてるわけじゃないんだから。嫌われてないのに好かれようと努力したって当然、効果が出るわけじゃないし、効果が出ないことで余計に精神的に追い詰められることになったら、それこそ何をしてるか分からなくなってしまう。


このことを理解するには、『玲緒奈は人間だ』っていう大前提に立たないと駄目なんじゃないかな。玲緒奈が自分と同じ人間だという視点を持って、『同じ人間として自分はどうなのか?』って考えてみることが大事な気がする。


絵里奈も、


「そうですね。私だって、パパのことは愛してます。でも、沙奈子ちゃんのことも玲那のことも愛してるんです。代わりにはならない。パパはパパで、沙奈子ちゃんは沙奈子ちゃんで、玲那は玲那ですから。それと同じなんですよね」


って言ってくれてる。そう考えられるようになって、自分で納得できるようになったって。


そして、絵里奈がそう考えられるようになったきっかけを作ってくれたのは、僕じゃなくて玲那なんだ。たぶん、僕だけだったら、絵里奈はそのことに気付けなかったかもしれないし、たとえ気付けても、今よりずっと時間が掛かっていたかもしれない。


その場合、玲緒奈は、『どうしてママじゃ駄目なの?』ってネガティブな気分になった母親の姿をずっと見ることになってしまう。それじゃ誰も幸せにならないよね。



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