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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百六十 玲緒奈編 「親としての敗北」

一月十二日。火曜日。雪。




今朝は、どうやら明け方から降り出したらしい雪がそのまま降り続いていた。と言っても、積もるところまではいってない。気温も、むしろ週末に比べるとマシになってる気がする。


今日は、打ち合わせのために午前中だけ会社に行く。指示書に書かれたニュアンスが伝わり難い可能性があるということで、クライアント側の担当者が直接出向いてくるそうだ。


いつものように『いってきますのキス』『いってらっしゃいのキス』を交わして出発。


「雪だから気を付けてね」


玲緒奈を抱いた絵里奈に言われたそれを頭にとどめて、焦らず、急がず、確実に会社への道程をこなす。


歩道を中学生が横に並んで塞いでいても、ベルを鳴らしたりもしない。時間は十分に余裕を持って出てきた。ここで苛々したら、注意力が散漫になる。注意力が散漫になれば、事故を起こす可能性が増す。


しかも、僕がもしその中学生たちに、


『横に並んで歩くな!。道を塞ぐな!』


とか怒鳴っても、彼らは反省しないと思う。それどころか、余計に反発するだけだろうな。


なにより、彼らは『僕の子供』じゃない。僕が彼らを諭さなければいけない義理も義務もない。それをしなきゃいけないのは、彼らの親なんだ。自分が親としてちゃんとしていない部分を、見ず知らずの他人を当てにされても困るよ。


『他人に叱ってもらおう』


というのがそもそも『甘え』だと思うんだ。


『今の教師は叱らなくなったから生徒に舐められる』みたいな話をよく聞くけど、僕の実感はまったく違ってる。沙奈子が通う学校は、基本的には頭ごなしに怒鳴るような教師は少ないけど、沙奈子も千早ちはやちゃんも大希ひろきくんも結人ゆうとくんも、別に、教師を舐めたりしてないよ。舐める必要がそもそもないんだ。そんなに強く反発もしてない。


あの結人くんでさえ。


何か不平不満があれば周りの誰かがそれに耳を傾けてくれて、一緒にどうすればいいのか考えてくれるから、学校では、ただおとなしく勉強だけしてればそれでいいんだよ。だから教師に叱られることもない。学校は、勉強をしに行くところだ。親の手抜きをフォローしてもらう機関じゃない。親の尻拭いをしてもらう機関じゃない。


沙奈子を育てるのは僕の役目であって、学校の教師の役目じゃない。親が手抜きしたこと失敗したことで教師を煩わせるというのは、迷惑を掛けるというのは、自慢できることなの?。


僕はそうじゃないと思ってる。自分に言い聞かせてる。自分の子供が他の子をイジメたりなんて、それこそ『親としての敗北』なんじゃないかな。


ましてや、『イジメられる側にも原因がある』とか言って臆面もなく『他人の所為』になんて、したくないんだ。



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