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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百五十七 玲緒奈編 「僕の知らない時間を過ごして」

一月九日。土曜日。晴れ。




今日も引き続き、『新型肺炎』のニュースが報じられる。


「日本にまで影響が出なければいいですけど……」


絵里奈がニュースを見ながら呟くように言った。


今現在、大変な思いをしている人たちのことを考えれば無責任な発言にも聞こえても、彼女は決して、苦しんでる人たちを蔑ろにしようとしてるわけじゃないのは僕たちには分かるから、そこについては敢えて何も言わない。ちょっとしたことで『不謹慎だ!』と声を荒げる人も少なくないにしても、僕たちはそういうのはしたくない。


それに、絵里奈の言ったことは、僕自身にとっても本音だからね。『対岸の火事で済んでくれれば』と思ってしまうのは、嘘偽りない気持ちだし。


そんな薄情な部分も自分が持ち合わせてるのをちゃんと理解して、その上でわざと他人を傷付けるようなマネはしないように心掛けなくちゃ。


自分の中にある『好ましくない部分』についても目を逸らさないようにしないと、『自分はあいつらとは違う』的な考えに陥ってしまって、他人を見下したり攻撃的になってしまったりということがあると思うんだ。


それじゃ意味がない。


もちろん、そういう部分でも完璧でいられるとは思わない。思わないけど、だからって完璧になれない自分に甘えて他人を見下したり攻撃したりっていうのも違う気がする。


沙奈子や玲緒奈れおながそんなことをしてると考えたら、たまらない気分になるし、何より、沙奈子や玲緒奈がそんな形で見下されたり攻撃されたりしたら、やっぱり許せない。許せないなら、自分が他人を見下したり攻撃したりっていうのも違うんじゃないかな。


こういうことについても、沙奈子や玲緒奈に、親としてしっかりと伝えていきたい。自分たちじゃない誰かがそれを教えてくれるのを期待するんじゃなくて、親である僕自身が伝えていかなくちゃ。


幸い、沙奈子も玲緒奈も僕のことを信頼してくれてるみたいだ。だとしたら、話も聞いてもらいやすいと思うし。


そして沙奈子は、今日も、千早ちはやちゃんや大希ひろきくんと一緒に水族館に行く。もちろん、星谷ひかりたにさんも一緒に。


いつものように、うちの一階でお昼を食べてから。


「いってきます」


「いってらっしゃい。気を付けてね」


リビングの階段のところで見送って、『いってらっしゃいのキス』と『いってきますのキス』を交わして、送り出した。


こうして、僕の知らない時間を過ごしていくんだな。


そう思うと少し寂しいけれど、でも、一緒にいる時には、玲緒奈が寝ている時なんかにはやっぱり僕の膝に座ったりして甘えてくれるのも事実だからね。彼女がそうやって甘えてくれる間は、応えたいと思うんだ。



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