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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百五十五 玲緒奈編 「齟齬がなかったから」

一月七日。木曜日。雨。




今日から沙奈子も学校が始まる。


なにやら今日から明日にかけて急激に冷え込み、天気が大荒れになるという予報だった。実際、すごく寒くなってきた。在宅勤務にしておいてよかったと感じてしまう。


昼頃から一気に寒くなった感じで、エアコンだけじゃ全然ダメで、石油ファンヒーターを併用してようやくリビングが暖まった。しかも、窓には断熱用のプチプチを貼り、階段のところにはカーテンを設置して熱を逃がさないようにして。


事務所もエアコンだけじゃ寒いから、こちらは大型スーパーで急遽買った石油ファンヒーターを置く。


正直、何が必要かはその時になってみないと分からないから、当分はこんな感じで順次対応することになるだろうな。




ところで、僕が出勤していなかった日に玲那が山仁やまひとさんの作品から引用して言ったことを、『前はフィクションを真に受けるなって言ってたじゃないか!』とか言う人もいると思う。


だけど、『真に受ける』のと『参考にする』のとは違うと思うんだ。


僕は、『真に受ける』というのは『まったく疑いなく肯定してしまう』ことで、『参考にする』というのは『適切かどうか自体を自ら検証する』ことも含んでのことだと考えてる。


なんて、こんな風に言ってること自体を『言い訳だ!』って言う人もいるだろうな。


でも、玲那は、それを言った時に絵里奈が余計に追い詰められたりするようなら、すぐに取り下げるつもりだったそうだ。


「ま、あくまで絵里奈がそれで落ち着いてくれたらよかっただけなんで」


とも言ってたし。


そうだ。僕たちは『専門家』じゃない。当然、専門的な知識も見識も持ち合わせていない。だから正しいかどうかまでは分からないけど、その時点での心の拠り所とかになるんならって形で参考にすることはある。


誰かを傷付けたり苦しめたりすることについては、慎重にならないといけないと思う。『復讐の正当性』なんかについてはそれこそ。何しろ、山仁さん自身が、『復讐劇の被害者』だから。


実の父親が、復讐のために幼い子供を含む七人もの人を死なせた挙句に本人も死刑になり、山仁さんは『七人殺しの役童えきどうの息子』として、途轍もなく苦しい人生を送ることになった。


『気持ちに区切りをつけるため』とか、『正義を成すため』とか、フィクションの中では正当なものとして扱われることの多い『復讐』だけど、実際にそれが行われると、えてして無関係な人が巻き込まれて犠牲になったりということがあるはずなんだ。そして、自ら復讐を実行しようとした玲那がどんな目に遭ったか……。


それを考えれば、やっぱり『真に受ける』ことはできない。


でもその一方で、玲那が絵里奈に語ったこととかについては、僕たち自身の実感とも齟齬がなかったからね。



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