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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百四十八 玲緒奈編 「外はとても寒そうだけど」

十二月三十一日。木曜日。雪のち晴れ。




大晦日。だけど僕たちはいつもと変わらずに目を覚まし、一日を始めた。


でも、カーテンを開けて外を見た玲那が、


「お、雪だ!」


そう声を上げたんだ。


見ると、雪がひらひらと舞い散っていて、家の屋根とかにうっすらと積もっているのが分かった。うちのベランダも北向きだから手すりのところとか外側に近い辺りにちょっと積もってる。


玲緒奈れおな~、雪だよ」ベランダに出る窓のところで、外を見せながら言ったけど、彼女にはまだよく分からないみたいで、


「ぽ? ぽぷぷぷぷ」


とか何とか。それが、


『何言ってるのか分かんない』


って言ってるように思えて、なんだかそれが可笑しくて、僕も笑顔になってしまう。


「まだ玲緒奈ちゃんには早かったかな~」


そう言った絵里奈も笑顔で、そんな僕たちを、沙奈子と玲那も笑顔で見守ってくれてた。


外はとても寒そうだけど、僕たちの家はすごくあたたかい。




僕たちはこうしてとても穏やかな気持ちでいられてるけど、千早ちはやちゃんのお姉さんたちには、千早ちゃんにとっての大希ひろきくんや結人ゆうとくんにとっての鷲崎わしざきさんのような出逢いがなかった。


当然だよね。千早ちゃんが大希くんと同じクラスになったのも、結人くんが鷲崎さんに出逢えたのも、まったくの偶然だから。本当にたまたま出逢えただけなんだ。そんな偶然に恵まれることもあるけど、でもそれは、本人の努力とかとはまったく別の話だからね。運悪く通り魔みたいなのと出くわしてしまうのと同じ、ただの『偶然』なんだ。


これについて、絵里奈が言ってた。


「偶然の巡り会わせを期待するというのは、きっと、ただの怠惰っていうものなんでしょうね。


私も、叔父さんがいてくれたから決定的に道を踏み外すことはなかったけど、叔父さんが私の叔父さんだったのは、私自身の努力とは何の関係もない」


そこに玲那も、


「だよね。偶然の出逢いや巡り合せに頼ろうとするのは、異世界に転生してチート能力を得て無双するのを期待するくらい、夢物語なんだと思う」


と。すると絵里奈が言ったんだ。


「そうだよね。でもそれと同時に、たとえ出逢いに恵まれても、活かすことができるかどうかは、本人次第だというのも事実だと思う。香保理かほりに出逢ってからの玲那がそうだったよ。初めに玲那を受け止めてくれたのは香保理だけど、玲那は最初は香保理に甘えてただけだったけど、途中からは玲那も香保理を受け止めてくれてたからね。それが香保理を癒してくれてた。救ってくれてた。


それでも、不幸は起こる。香保理の事故みたいなことは起こる。でも、今なら分かるよ。あそこで、もし、玲那が香保理を受け止める努力をしていなかったら、今の玲那はいなかったし、私はたぶん、香保理の後を追ってたと思う。努力があってこそ、出逢いが活きるんだろうな……」



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