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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百四十五 玲緒奈編 「玲緒奈も僕の思い通りには」

十二月二十八日。月曜日。晴れ。




二十六日が土曜日だったから、今日、三ヶ月検診に行ってきた。


体重、七〇二〇グラム。身長、六十二.三センチ。栄養状態、良。栄養方法、混合。離乳準備、未開始。股関節開排制限、なし。


全体の所見、健康。


今回も玲緒奈は堂々としてたけど、やっぱりあれこれいじられるのが嫌だったのか、途中からぐずり出した。でも、僕が抱くと落ち着くから、まあ、概ね問題なく終えられたかな。帰りも、ベビーカーの中で、外の景色に興奮したのか、


「ふんす! ふんす!」


って感じで動いてたし。


「でも、健康でよかったよ」


「そうですね」


ご機嫌な玲緒奈を見ながら、僕と絵里奈もホッとしてた。




今日は、『SANA』も仕事納め。


学校が冬休みに入ったイチコさんと田上たのうえさんも毎日朝から出勤してくれてたけど、五日までは休みだ。


例の『伝染性の疾病』についても、あれ以来、続報はない。このまま大きな影響もないうちに収束してくれたらと思う。もちろん、それが猛威を振るってる地域の人たちは苦しんでるだろうから軽々しくは言えないものの、少なからず本音ではあるんだ。同時に、大変な思いをしてる人たちが救われてくれることを願わずにはいられない。


だって、そこでは、沙奈子や玲緒奈れおなみたいな子供も辛い思いをしてるかもしれないし。


大人として、子供が辛い思いをしてる可能性があることについては胸が痛むよ。もっともそれも、沙奈子と出逢えたからこそそんな風に思えるようになったのも事実なんだ。沙奈子のことがなかったら、僕は、他人がどんなに苦しんでてもまったく気にしないままだっただろうな。


加えて、玲那や千早ちはやちゃんや結人ゆうとくんの例もあるように、『変わることもできる』のは事実だと思うけど、経験や状況によって人間は変われるとは思いつつ、だけど、最初からイチコさんや大希ひろきくんのような穏やかな人でいられたらそれに越したこともないと思うんだ。一度歪んでしまってからそれを直すというのは、はっきり言って『無駄な手間』だよね。真っ直ぐ育ってくれればそれが一番じゃないかな。


玲那や香保理かほりさんや沙奈子の『有り得たかもしれない可能性』という想いを背負うことになった玲緒奈には、イチコさんや大希くんのような穏やかな人になってほしいと思うし、そうなってもらえるように僕は努力する。『面倒だから』と言って掛けるべき手間を惜しむということもしたくない。


玲緒奈に穏やかな人でいてほしいと思うなら、『玲緒奈が穏やかでいられる努力』を惜しんじゃいけないよね。その努力をせずに、玲緒奈に自分の思うような人になってもらうこと期待するなんて、『甘え』以外の何ものでもないよ。


今日も、新しいおむつを付けようとした途端に『しょしょしょ~』っておしっこをされて新しいおむつが台無しになってしまったりもしたけど、僕は、その程度のことでは苛々したりしないように心掛けてる。


自分の思い通りにならないのは当然だ。玲緒奈は僕の血の繋がった子供ではあっても、『僕』じゃない。れっきとした『別の人間』なんだ。僕が他人の思い通りに生きられないのと同じで、玲緒奈も僕の思い通りにはできない。


この当たり前のことを忘れずにいなくちゃと思う。



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