千六百四十三 玲緒奈編 「言われてみれば確かに」
十二月二十六日。土曜日。曇り。
玲那は続けた。
「ネットとかでさ、こう、『相談』とかしてる人いるじゃん?。まあそれ自体、『ネットで相談するとか、リアルで相談できる人いないの?』みたいに思っちゃったりもするんだけど、今は取り敢えずそれは脇に置いといて、相談してる人に対してさ、最初っから貶したりバカにしたり否定から入ったりするのがいるんだよ。
でもさ、相談者は仮にも悩んでるから相談してるんだよね?。少なくともそういう体だよね?。それってつまり、『他人の気持ちが分からない』『他人の気持ちを分かろうとする気がない』『まず否定で入る』ってことだよね?。で、その『相談』がイジメとかについてだったりすると、すっごくおかしなことになるんだ。
だって、『イジメられる側にも原因がある』みたいなことよく言われるじゃん?。そんでもって、『他人の気持ちが分からない』『他人の気持ちを分かろうとする気がない』『まず否定で入る』のとかって、典型的な『嫌われるパターン』じゃん?。『イジメられやすいタイプ』ってのにはまるじゃん?。
ということは、イジメで悩んでる人を、『他人の気持ちが分からない』『他人の気持ちを分かろうとする気がない』『まず否定で入る』ような、『典型的な嫌われ者でイジメられやすいタイプ』が貶したりバカにしたりしてるってわけ。
おかしいじゃん。なんで『典型的な嫌われ者でイジメられやすいタイプ』が、イジメの被害を訴えてる人を叩いてんの?。どういうこと?。自分もリアルじゃ嫌われてたりイジメられてたりするから、他人を叩いて憂さ晴らししようとしてんの?。意味分かんないよね。
しかも自分がそうやって他人を傷め付けて憂さ晴らしとかするタイプだから周りから嫌われててそれで『自分は不幸だ!』とか思ってたりするん?。
それ、自分が招いたことじゃん。『イジメられる側にも原因がある』ってのが本当なら、自分が上手くいかない原因は自分にあるってことじゃん。
イジメで苦しんでる人を、『典型的な嫌われ者でイジメられやすいタイプ』が貶したりバカにしたりなんて、それこそなにしてんのか分かんない」
僕は、そんなにネットは見ないから、玲那の言ってることを完全には理解できてないかもしれない。でも、悩んでる人、苦しんでる人、悲しんでる人こそを傷め付けようとする人がいるのは知ってる。玲那の事件の時にとことんまで思い知らされた。
言われてみれば確かに、『他人の気持ちが分からない』『他人の気持ちを分かろうとする気がない』『まず否定で入る』みたいなのがすごく多いっていう実感はある。そして、『他人の気持ちが分からない』『他人の気持ちを分かろうとする気がない』『まず否定で入る』のは嫌われやすいタイプだって言われてるよね。
なるほど、そういうことなのか……。




