千六百四十二 玲緒奈編 「そういうものだっていう」
十二月二十五日。金曜日。晴れ。
昨日のパーティーは、規模こそささやかだったけど、以前のようなカラオケボックスでのそれみたいに賑やかじゃなかったけど、千早ちゃんお手製のケーキを囲んで、みんなが楽しそうで、本当に良かった。
大希くん、千早ちゃん、星谷さん、結人くん、波多野さん、田上さん、イチコさん、沙奈子、玲那。そして、ビデオ通話で参加した僕と絵里奈と玲緒奈。
今年一年、みんなが無事だったことにホッとする。
ところで、鷲崎さんはと言うと、当然、喜緑さんと二人きりの時間を過ごしてるそうだ。結人くんが気遣ったらしい。もっともそれも、波多野さんがいればこそかもしれないけどね。
そして、そんな結人くんを誰もからかったりしない。だからこそ、彼も素直にこの場に加われるんだろうな。
世の中には、そういうのを馬鹿にしたり嘲ったり冷やかしたりする人も少なくないからね。
パーティーが終わった後、玲那が言った。
「私も、玲緒奈を見ててつくづく感じたよ。親の振る舞いが子供の普段の振る舞いも基になるんだってことをさ。
結人のこともそうだけど、ついこの前、ヒロ坊がね、イチコが買ってきたホラー漫画を読んじゃってそれで怖くなって、一人でトイレに行けなくなったらしいんだ。だけど、山仁さんはそれを馬鹿にしたりせずに、トイレに付き合ってくれたんだって。
ヒロ坊が他人を馬鹿にしたり嘲ったりしない理由がよく分かるよ。
もう中学二年の男の子が『怖くて一人でトイレに行けない』ってことさえ、山仁さんは馬鹿にしたり嘲ったりしないんだ。だからヒロ坊もイチコも、他人を馬鹿にしたり嘲ったりしないんだよ。そういうものだっていう思い込みがないんだ。
ホント世の中には、特にネットなんかじゃさ、他人のことを馬鹿にして嘲ってないと死んじゃう病気にでも罹ってんの?ってくらい、ひたすら他人を馬鹿にして嘲ってるのがいるからね。ホント、そういうの、どこで習うんだろうね?。
で、考えたら、結局、赤ん坊の頃からすでに、言葉と一緒にそういう振る舞いを学んじゃってるんだろうなって、玲緒奈と接してるパパちゃんや絵里奈や沙奈子ちゃんを見てて実感したんだ。パパちゃんや絵里奈や沙奈子ちゃんは、玲緒奈の前で誰かを馬鹿にしたり嘲ったりしないじゃん。だったら玲緒奈もそういうの、学びようがないよね。
他人がそういうことしてるのを見る場合だってあるかもだけど、でも、親や家族がやってる場合と比べたらどってことないと感じたよ」
と、玲那の言うことももっともだと僕も思うんだ。




