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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百三十八 玲緒奈編 「この辺りのバランスも」

十二月二十一日。月曜日。晴れ。




「また情報が入ればお知らせします」


昨日、星谷ひかりたにさんがそう言ってから、今日のところは、現在地を知らせる通知が入ってくるばかりだった。


ハノイからホーチミンに移動、『SANA』のドレスの生産を行ってもらってる工場の視察も行ったらしい。


これを、若干二十歳の女の子がしてるんだから、驚くしかない。


なのに、『星谷さんなら普通かな』って思ってしまう自分もいるんだ。


玲緒奈れおなはさすがにそこまでのことができるようになるとは思わないけど、この子もこの子で、自分の人生を自分の力で生きられるようになってくれればそれでいい。


一方、星谷さんが言ってた『伝染性の疾病』については、ニュースでは今のところ何もそういうのがなかった。だから正直、そんなに大したことじゃないのかもしれないっていう印象しかない。確かにそれが流行している地域では大変なことになってるんだとしても、やっぱり他人事って感じなんだ。


『SARS』や『新型鳥インフルエンザ』の時も、ニュースでいろいろ言ってた割りには実感はそんなになかったし。


でも、それは、政府とかがしっかりと対応してくれたからなんだろうなとは思う。自分のところに降りかからなかったからといって、『大したことじゃなかった』というわけじゃないと思うんだ。


だから今回も、抑えられるんじゃないかなって気がする。『エボラ出血熱』も、随分と不安を煽るような報道がされててもちゃんと収まったし。


だけど同時に、僕たちは僕たちで、玲緒奈が病気になったりしたら嫌だし、独自に気を付けないとね。


手洗いうがいはもちろん、消毒も徹底する。


清潔にしすぎるのも具合悪いんだとしても、乳幼児の死亡率が減ってるのは、衛生状態と栄養状態が良くなったからっていうのは事実だと感じる。せめて、免疫がしっかりしてくるまでは、気を付けたい。それからだったら、外で土を触る程度のことに目くじらを立てたりしないようにしようとは思うけど。


この辺りのバランスも大事なんだろうな。


と、玲緒奈の哺乳瓶の煮沸消毒をしながら考える。


すると絵里奈が、


「衛生状態とかについての常識って、どんどん更新されますよね。祖父母世代だったら、それこそ、離乳食として母親が嚙み砕いたものを子供に与えてたってこともあったって聞きますけど、実はそれが、虫歯菌やピロリ菌の感染ルートだったみたいな話もありますし。しかも、そういうことが判明して常識が変わったのにそれを認めない祖父母世代とで衝突が。って話も聞きます。だからそういう意味では、両親と縁が切れたのはむしろホッとしてます。


私の両親は、自分たちの考えを押しつけてくるタイプでしたから」


玲緒奈におっぱいをあげながら言う。僕もそれには、


「正直、同感だよ。僕の両親も、口出ししそうなタイプだったからね」


トングで哺乳瓶を取り上げながら応えたのだった。



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