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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百三十七 玲緒奈編 「自分にできることをするだけ」

十二月二十日。日曜日。晴れ。




今日も、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんが来て、厨房でお昼を作ってた。


ただ、星谷ひかりたにさんは、何か急用ができたとかで海外に渡航したらしい。


「なんか、新しい事業の関係みたい」


玲那が言う。


千早ちゃんと大希くんについては、さすがに中学二年生だし、何より、もうベテランの域に達してるから、星谷さんが付いていなくても何も問題なかった。玲那もいるしね。


と、そこに、星谷さんからビデオ通話が。


「実は、山下さんと絵里奈さんにお話しが……」


少し改まった感じのそれに、玲緒奈れおなを抱いた僕も思わず姿勢を正す。


「なんでしょう?」


絵里奈が問い掛けると、星谷さんは、


「実は、私の海外の知人からの情報で、中国のある地域で何やら新しい伝染性の疾患が猛威を振るっているらしいんです。感染力が強く、致死率も決して侮れないものなんだとか。


すでに外国人の感染も報告されていて、状況は楽観視できないとの話でした。かつての『SARS』や『新型鳥インフルエンザ』の件もありますので対策は取られているようですが、影響が懸念されます。明後日には帰国を予定していますが、『SANA』としても何らかの対策を講じる必要があるかもしれません」


と、やや緊張した様子ながらも冷静に話してくれた。でも、その冷静さが逆にちょっと怖くて、


「なにか、大変なことになりそうなんですか?」


思わず聞き返してしまった。


「現時点では何とも……。ただ、日本にまでは直接影響が出ないとしても、東アジアでの流通などには影響が出る可能性は想定しておいた方がいいでしょう。なのでそれも含めて検討しなければと思います。


絵里奈さんは、現在、育児休業中ではありますが、状況が状況だけに、情報共有と認識のすり合わせだけは行っておきたいのですが、いかがでしょう?」


真剣な星谷さんの様子に、絵里奈も姿勢を正して、


「分かりました。星谷さんの指示に従います」


って。


それを確認して、星谷さんは、


「先ほども申しました通り、『SARS』や『新型鳥インフルエンザ』の経験もありますのでおそらく対策は十分に取られると思います。あまり心配しすぎて委縮してしまってはかえって混乱するでしょうし、経過を見守りつつも冷静に対処しましょう」


とのことだった。彼女の毅然とした態度に、僕も絵里奈も少しホッとする。


僕からは一回り以上年下、絵里奈からも十歳も年下の彼女にそんな風に思わされるのもちょっと情けないと思いつつ、だけど実際に能力がある人を相手に年齢でどうこうというのも違うと思う。


僕たちはただ、自分にできることをするだけだ。



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