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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百三十六 玲緒奈編 「実に平和ですな」

十二月十九日。土曜日。晴れ。




昨日、久々に自転車でスーパーまで買い物に行ったけど、ちゃんと睡眠がとれてないせいか、なんとも言えない感じがあった。徹夜明けに出掛けたみたいな?。


それでも、危ない感じはなかったし、うん、大丈夫そうだ。


年明けには仕事も始まる。


一応、会社には、改めて、当面の間の在宅勤務を願い出ててある。とは言え、復帰初日にはセキュリティーキーの受け取りもあって会社に顔を出さないといけないからね。自転車での通勤になるし、それも含めて体を慣らしていかないと。


そして今日は、絵里奈が買い物に行く。


「絵里奈~、大丈夫~?」


玲那がまた悪戯っぽく聞いてる。


「大丈夫だよ。沙奈子ちゃんも一緒だから」


苦笑いを浮かべながら絵里奈が応えた通り、沙奈子が一緒に買い物に行くことになったんだ。明日は、僕と一緒にという風に、僕と絵里奈の買い物についていくってことで。


せっかくだから、少しでも僕や絵里奈と一緒にいたいってことだった。それに外なら、沙奈子が僕と絵里奈を独占できるしね。


でもその前に今日はまた、千早ちはやちゃんたちと水族館だ。帰ってきてから買い物に行くことになる。


これも、ちょっと出掛けるだけで疲れてしまってた以前の沙奈子では考えられないことかな。本当にあの頃のことを思えば別人のようだよ。


「沙奈子ちゃん、しっかりしてきましたよね」


千早ちゃんたちと水族館に行くために部屋を出ていった沙奈子を見送った絵里奈がそう呟いた。


「うん。そうだね。すごい成長だと思う」


『普通の中学生』ならなんてことないかもしれないけど、沙奈子のことを知る僕たちにとっては、これだけでも感心せずにいられないんだ。そして、安心せずに、ね。


あの子がちょっとでも『普通』に近付けてるのなら。


完全に『普通』にはなれなくても、ある程度でも近付けるならそれに越したことはないと思うし。


もちろん、拘る必要もないのは分かってる。『普通』になれないのに『普通』に拘り過ぎて結果として心を病んでしまったりしたら本末転倒だ。拘り過ぎず、だけど近付けるならそれに越したことはない。


その程度でいいと自分に言い聞かせる。




そうして夕方。帰ってきた沙奈子と一緒に、絵里奈が買い物に行った。


僕と玲緒奈と玲那が留守番だ。


今日の分の家事を終えて、リビングで玲緒奈と『にらめっこ』していた玲那が言う。


「いやあ、実に平和ですな」


「確かに。自分が子供の頃のことを思い出してみても、こんな平和な時間なんてなかった気がするよ」


「まったく。私は、香保理かほりや絵里奈と出逢うまでは安心なんてした覚えがないしね」


玲那の言葉は、何よりも重かったのだった。



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