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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百三十三 玲緒奈編 「沙奈子こそが恩人なんだ」

十二月十六日。水曜日。晴れ。


昨日から日本海側では大雪になってるところが多いらしい。この辺りでは雪はまだだけど、かなり寒くなってきた。




でも、部屋の中は、少なくとも玲緒奈れおながいるリビングは、快適な温度を保つようにしてる。着替えさせたりオムツを替えたりする時に寒くないようにね。


「いや~、事務所に行くのも辛いくらいですな」


玲那が冗談めかしてそう言った。すると沙奈子も、


「うん、そうだね……」


だって。


そんな風に冗談に合わせることができるようになってきたんだと、僕はなんだか嬉しくなってしまった。


その沙奈子が言う。


「私も、玲緒奈が来たらどんな風に思うか、ちょっと不安だった。お父さんとお母さんが玲緒奈のことばっかりになって、私のこと、見てくれないかもって……。そんなことないって思ったけど、でも、ちょっと不安だったんだ……。だけどもう大丈夫だよ……」


こうやって話をするのもあまり得意じゃないはずの沙奈子が自分の想いをちゃんと口にしてくれることが、本当に嬉しい。それを口にしても大丈夫な親だって思ってもらえてるっていう何よりの証拠だと思う。


沙奈子は、すごく我慢強い子だから、辛いことがあってもそれを表に出さないようにしてしまうところがある。僕のところに来たばかりの頃にも、酷い虫歯ですごく痛かったはずなのに『痛い』とも口にしないようにしてたくらいだし。


その沙奈子が、


『不安だった』


と、自分の気持ちを口にしてくれる……。ああ…、本当に僕自身を認めてもらえてる実感がある。


「沙奈子。僕はもちろん、沙奈子のことを愛してる。玲緒奈だけじゃなくて、沙奈子も僕にとっては『本当の娘』だよ。それは保証する。むしろ、沙奈子がいなかったら今の僕もいなかったんだ。絵里奈や玲那に認めてもらえる僕にはなれていなかった。沙奈子がいてくれたからこの家庭はあるんだよ。僕にとっては沙奈子こそが恩人なんだ」


それは、まぎれもない僕の本音。僕が沙奈子を『育てた』んじゃない。『育てさせてもらった』んだ。恩を感じるのは僕の方であって、沙奈子に恩を売れるとは思ってない。


すると絵里奈も、


「そうだよ。沙奈子ちゃん。沙奈子ちゃんがいたからこそ、私たちは家族になれたんだ。ありがとう」


と語って、玲那も、


「その通り。私がパパちゃんの娘になれたのも、沙奈子ちゃんのおかげ。沙奈子ちゃんこそが私たちの『恩人』だよ」


笑顔で続いた。


そんな僕たちに、沙奈子は、照れくさそうに微笑んでくれたんだ。



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