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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百三十二 玲緒奈編 「立派だと心から思う」

十二月十五日。火曜日。曇り。




本格的に寒くなって、ベランダに出るのも憚られる。だから窓は閉めた状態で、外が見えるところに立つと、玲緒奈れおなは外をじっと見詰めてた。


今年も残り半月。いろいろあった一年だけど、『SANA』も立ち上げてまずまず順調にいってて、玲緒奈も生まれて、僕たちは幸せだ。


もちろん、玲那のこととか気掛かりな面はある。でも、『本当に何一つ問題なく平穏な人生』というもの自体がたぶん滅多にないことだと思うから、結果として幸せを感じられているなら、それは幸せなんじゃないかな。


玲緒奈もそれを実感できてくれたらいいな。


これを思うと、ネットで誰かを追い詰めて自殺までさせる人たちは、何が目的でそんなことをしてるのか、全く分からない。玲那をメチャクチャに攻撃してた人たちは、彼女が自殺でもするのを望んでたのかな。


もし僕たちも同じようなことをしてたら、決して、今みたいに穏やかな気持ちでいられなかっただろうなって思う。


他人が攻撃してくるからって自分たちも同じようにやり返してたら、こうはなれなかったのは間違いないよ。


もちろん、身を守ることは必要だと思う。だからこそ僕たちは徹底的に守りを固めることを心掛けた。事情を知ろうともしないどこの誰かも分からない人からの理不尽な暴力とは敢えて正対しなかった。たった数人で無数の『正義を振りかざす人間』を相手にするのは無謀以外の何ものでもないし。


だけど同時に、『理不尽な暴力とは敢えて正対しない』という選択をできたのは、一緒に耐えてくれる家族がいたから。僕たちを理解してくれる人たちがいたから。それがなかったら、たぶん、耐えられなかった。


玲那が言う。


「マジでさ。実際に被害に遭った人が怒るのは分かるんだよ。私だって許せない。今でも実の両親やお客らのことは許してない。


だけどね、被害に遭ったわけでもない無関係なのが罵詈雑言や誹謗中傷並べるってのは、『正義』じゃないよ。ただの『正義の名を借りた憂さ晴らし』だし、『正義の名を騙る暴力』だとしか思わない。パパちゃんが言葉を選んで言ったことでも『批判』になるんだったら、罵詈雑言や誹謗中傷は批判には必要ないことで、それを使うってのはただの『暴力』だよ。ホントにホント。『言葉を選ぶ努力』さえ放棄して、何が正義だよ。


犯罪者ってのはね、『甘ったれ』なんだ。犯罪以外の手段をとる努力を放棄した甘ったれだよ。だから、『言葉を選ぶ努力』を放棄することも『甘え』だし、罵詈雑言や誹謗中傷を並べる奴も『甘ったれ』だと私は思う。自分が法を犯したからこそ、そう思うんだ」


こういうことをしっかりと口にして、自分のやったことを正当化しない彼女を、僕は立派だと心から思う。



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