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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百二十五 玲緒奈編 「両親や兄と同じことをしていたら」

十二月八日。火曜日。晴れ。




『子供の他人への接し方は、親のそれが基になってる』


僕は今、それをすごく実感してるけど、もちろんそれは、


『両親がやってたことを必ずそのまま真似る』


という意味じゃない。僕自身、両親がやってたみたいに店員や職員に対して横柄に振る舞ったり怒鳴りつけたりっていうのは、しないようにしてたし。


でもそれは、『別の視点』を持てたから。その『別の視点を持てるようになったきっかけ』については自分でも覚えてないけど、何かのきっかけて両親のしていることが良くないことだと知ったんだと思う。


一方で、その『きっかけ』がなかったのかもしれない兄は、まさしく両親がしてるのと同じことをしてた。


僕が覚えてる限りでは、中学の頃にはもう、ファミリーレストランとかで店員に対してすごく横柄な態度を取ってたな。


僕はその時、兄よりも、困ったような表情になってた店員さんの姿を見てた。


『こんな風にして他人を困らせる人が『いい人』のわけない』


って思ってた気がする。


そんな兄と、僕の違いは、どこから来たんだろう?。


残念ながら、そうして分かれることになった『きっかけ』については覚えてない。それを覚えてれば、もっといろんなことが分かりそうな気がするのに。


でも、覚えていないことをいくら悔やんでも仕方ない。今、そう思えるようになってるという事実が大事だ。そのおかげで、僕は、沙奈子や絵里奈や玲那からの信頼を勝ち得ることができた。千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや星谷ひかりたにさんや山仁やまひとさんやイチコさんや波多野さんや田上たのうえさんや鷲崎わしざきさんや結人ゆうとくんからも。


両親や兄と同じことをしていたら、決して得られることのなかった関係。


両親や兄も、たくさんの親しい相手はいたみたいだけど、両親が立て続けに亡くなった時に葬儀に来てくれた人は、それぞれ十人にも満たなかったはず。兄すらどちらの葬儀にも顔を出してない。


そして、行方をくらました兄を探しているのは、警察と、債権者だけ。高校や大学時代にはたくさんいたはずの『友人』にも心配されてないどころかもう忘れられているみたいだ。覚えてる人も、


『ロクな奴じゃなかったよね』


的なことを言ってるらしいと、債権者の一人だった知人に聞かされた。その人が兄に貸していた金額は、十五万円。兄が行方をくらました時点で『もう諦めた』とも言ってたな。


『友人』にも顧みてもらえず、案じてももらえない。


そんな人生が『幸せ』だとは、僕にはどうしても思えない。本人たちがそう思いたいなら勝手にしてればいいけど、僕には無理なんだ。


「うーぱ、うーぱ」


僕の膝で声を上げながら手足をしきりに動かしてる玲緒奈れおなを見ながら、しみじみ思ったのだった。



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