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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百十六 玲緒奈編 「まるで怪物みたいに」

十一月二十九日。日曜日。晴れ。




玲緒奈れおなは相変わらず、寝る時は僕が抱かないと駄目だった。


眠い時とお風呂の時じゃなきゃ絵里奈や玲那でも大丈夫みたいなのは分かってきたんだけどね。あと、沙奈子が抱くとやっぱり泣くのは、安定感が十分じゃなくて不安だからだろうな。正直、傍から見ててもちょっと怖いんだ。だとしたら、実際に抱かれてる玲緒奈はもっと怖くても当然じゃないかな。


こういうことも、玲緒奈のことをちゃんと見てるから分かってきたんだと思う。


玲緒奈は人間だよ。ちゃんと人間として僕たちにたくさんのことを伝えようとしてくれる。赤ん坊だから大人と同じようにできないだけなんだ。だったら、僕たちの方が、彼女が伝えようとしてることを理解する必要がある。


勝手にこの子をこの世界に送り出した者として、それをする義務があるはずなんだよ。でなきゃおかしい。玲緒奈自身が望んできたわけじゃないのに、上手く伝えられない責任を彼女に求めるなんて、筋が通らない。


そうだよ。『現実』と向き合えば、その答しか出てこないと思うんだ。


『親の勝手で子供を作った』


『子供が自分で望んで生まれてきたわけじゃない』


その現実と向き合えばね。


このこと以外にも、『現実』と向き合わないから、


『相手も自分と同じ人間であり、自分と同じ権利を持ってる』


っていう現実と向き合わないから、相手を蔑んだりできるんだよね?。イジメとかって、結局、そういうことだよね?。


犯罪だってそうだ。相手を『自分と同じ人間』だっていう現実とちゃんと向き合わないからこそできることだって気がする。


それについて、玲那も言ってた。


「ああ、なんか分かる気がする。私も、あの人を刺そうとした時、たぶん、人間だと思ってなかった。結局、悪魔かなんかだと思ってたんだよ。だから躊躇いなく刺せた。人間だと思ってたら刺せなかったよ。さすがに」


そうだな。僕が両親や兄のことをすごく冷淡に見られてしまうのも、あの人たちのことを『自分と同じ人間』だと見做してないからだろうなって僕も感じてる。


僕にとっては、


『人間のようにも見えるおぞましい怪物』


なんだ。だから情も感じないし、死んだり行方不明になっててもなんとも思わない。だけど、自分の肉親にそんな風に思われるって悲しいことなんじゃないかな。自分の息子や弟からそんな風に思われるようなことをするって、おかしいんじゃないかな。


そう考えれば、自分の子供から、玲緒奈から、まるで怪物みたいに見られるようなことをするなんて、有り得ない。


有り得ないよ。



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