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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百十五 玲緒奈編 「自分からやりたいと思える」

十一月二十八日。土曜日。曇り。




「それじゃ、いってきます」


今日も、沙奈子は、千早ちはやちゃんたちと一緒に水族館に行くことになった。お昼は一階の厨房で済ませて、それから出発だ。


絵里奈は今は仕事を休んでるけど、休業に入る前に、沙奈子のドレスの量産モデルの見本と、絵里奈デザインのドレスについて向こう半年分まで用意していたからそっちの方の心配はないって。


だけど沙奈子のドレスのデザインはその時のひらめきが大切だそうで、


「沙奈子ちゃんがドレスのデザインのひらめきを得るためには、たぶん、『生きた手本』が必要なんでしょうね」


絵里奈もそう言っていた。だから沙奈子が、生き物の『動き』も含めた『印象』が必要だというのなら、それをしっかりと実地で得てきてほしいと思う。


そういう積み重ねが、きっと、今後に活きてくると思うから。


沙奈子は、正直、すごく危うい部分を持ってるけど、同時に、すごく強い子でもある。下地をしっかりと作り上げていけば、そういう自分の『危うい部分』もちゃんと制御できる子なんじゃないかな。


そして玲那も、沙奈子に負けず劣らず頑張ってくれている。


「んじゃ、お風呂掃除すっから」


今日は曇ってて外に布団は干せないから部屋の中で折りたたみ式の布団干しに掛けたあと、そう言ってお風呂場に行った。


小学校低学年の頃にはもう、玲那は家に一人で放ったらかされてたそうだ。なのに、その時やってた商売が好調だった両親は他に部屋を借りて、贅沢な暮らしをして。でも玲那にはお金だけ渡して、


『これで自分でやれ』


とか言って。


それを玲那は、自分でスーパーに買い物に行って、半額になったお弁当を買ったり、お米を買って自分でご飯を炊いたりってして。


他にも、家の掃除をして、お風呂を沸かして。


小学校低学年の子供がだよ?。


僕のところに来たばかりの頃の沙奈子より小さな子がだよ?。


それで子供がまともに育つって言うんなら、親なんてそれこそ要らないじゃないか。


そんな経験をしてきてるのに、玲那は、こうして、嫌がることなく家のことをしてくれてる。


だけど一時は、『嫌なことを思い出すから』って何もしなかったこともあったって。それが今、自分から進んでやってくれるんだ。


自分からそれをしたいと思える家庭を作れてるってことなんだって思える。


もしそうじゃなかったら、僕と絵里奈が玲緒奈れおなにばっかり構ってて家のことは何もしないで、沙奈子と玲那にばかり押し付けてるって思われても無理ない状態だからね。


そうだ。『やらせる』んじゃなくて、『自分からやりたいと思える環境を作る』ことが大事なんだろうな。しかも、『仕方なく』じゃなくて、『楽しめる』それで。


沙奈子と玲那が僕にそのことを教えてくれたんだ。



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