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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千六百十 玲緒奈編 「親の大事な役目の一つ」

十一月二十三日。月曜日。晴れ。




今日は勤労感謝の日。


とは言っても、別に何もしない。こういう日に、特別何かをするというのは、僕たちの間では基本的にないんだ。感謝は、いつだってしてる。『勤労』だけじゃなくて、普段の何気ない気遣いに対しても、ね。


それができるから、僕たちはこうやって穏やかな関係を保っていられる。


僕は、家族のことを気遣いたいんだ。絵里奈も僕のことをすごく気遣ってくれてるのが分かる。


どちらか一方ばかりが我慢したり気遣ってもらったりというのは、『対等な関係』とは言わないと思う。


しかも、千早ちはやちゃんや大希ひろきくんでさえ、沙奈子とお互いに気遣い合える関係だ。もちろん、子供っぽい無遠慮さもあるけど、決して相手を蔑ろにはしてない。


だから任せられる。


千早ちゃんの場合は、星谷ひかりたにさんという素晴らしいお手本がいるからだろうな。


だけどその星谷さんでさえ、イチコさんたちと出逢うまでは高慢で傲慢で他人を気遣うなんてそれこそ『自分にとって有益な相手にしかする必要がない』って思ってるタイプだったって。


それがいまや、波多野さんのお兄さんが『見ず知らずの女性の部屋に侵入して乱暴する』なんて事件を起こしても、『友人である波多野さんのため』という大前提はあっても見限らずに何とか更生を図れるように支援するまでになるんだから、どういう人と出逢えるかというのも人生にとってはすごく大きいんだって改めて実感する。


もっとも、当の波多野さんのお兄さんは、いまだに自分の罪を認めずに争い続けてるけどね……。


本当に、自分がそうすることで両親をはじめとした家族をとことんまで苦しめるつもりらしい。波多野さんにはもう一人お兄さんがいるらしいけど、そっちのお兄さんは事件の所為で婚約者との関係も壊れたあと、連絡も取れないそうだ。


いったい、どうしてそこまで家族を憎めるのか……。


でも、本音を言うと、僕自身、自分の両親や兄のことを思えば、何となく想像できないわけでもないかな。あの両親や兄なら、どんなに苦しんだって苦しめたって僕は胸が痛むことはない気がする。それどころか、喜んでしまいそうな予感さえある。


だからって、自分の家族との確執に他人を巻き込んでいいはずがないじゃないか。そこが根本的に間違ってるって思う。


そう考えるからこそ、僕は、沙奈子や玲緒奈れおなが僕や絵里奈に対して何か不満があるとしたら、まず、僕たちにぶつけてほしいと思うんだ。


『育ててやったのに』


『生んでやったのに』


なんて思わない。僕たちは完璧じゃない。だから当然、何一つ不平不満もない育児なんてできるはずがない。不平不満はあって当然なんだ。それに耳を傾けることで、他人に矛先が向くのを防ぐんだ。


これも、親の大事な役目の一つだと思う。



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